November 14, 2013

知財立国から知財ユートピアへ:日本が進むべきこれからの道

 WikileaksがTPPで扱われる知財関連についての草案と覚しき文書を公開したらしい。ITmediaで簡単に概要が紹介されていた。

TPPの草案か 知財関連の秘密文書、Wikileaksが公開

 Wikileaksそのものの中身については面倒なので後から読んでみようと思うけれど、こういうことで人心が惑い国家が不安定になるのはよろしくないので、拙いながらも日本が知財問題について進むべき真の道を提案してみたいと思う。

 まず、日本は今の著作権や特許権にまつわる法律を解体し、知財に関する全ての権利は国に帰属することとすべきである。そして権利管理は、総務省、文化省、経産省などの上位機関として新たに知財管理省を設けることで、これまで各省による利権争いを封じることとする。

 知財に関連した犯罪はすべて国からの親告によって断罪し、取締はすべてを警察に一任。これまでのような手緩い対処ではなく、全ての著作権および特許権の侵害行為は刑事罰として処することにする。

 日本国民は全ての著作権および特許権について、その権利を国に譲渡することを義務付ける代わりに、そうした知財を生み出した個人の名前を国が管理するデータベースへ登録できる権利を与えられる。

 国は全ての著作権および特許権に関する使用権利を国民に有料で一定期間において使用を許可する。権利使用料は国に納付され税金と同じ扱いとする。著作権および特許権の発案者として登録されている者は、他の者よりも権利使用料支払において若干の優遇措置が施されることとする。これにより、新しい知財が生み出されるためのインセンティブとする。

 以上、かなりテキトーに書いたので抜け落ちていることは多々あるとは思うけれど、まずはこの提案を叩き台にして、知財立国改め、日本の「知財ユートピア」化を目指そうではないか、諸君。

 そんじゃーね!  

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May 20, 2012

レコードやCDに表記されている「規定文」の変遷をテキトーに追っかけてみた

昨日、「音楽の著作権はいまどうなっているのか?勉強会」に参加して、そこでかなりテキトーな発表をしたのだけど、その発表の中で取り上げたレコードやCDのパッケージ(ジャケットや帯、等々)に記載されている「規定文」の変遷の話について、こちらのブログでもメモしておくことに。

規定文というのは、レコードやCDについて、著作権法上の決まり事から「こういう使い方はしないでください」ということを消費者に伝える注意書き。すごく小さく印刷されていることがほとんどなので、今までCDなど買っても読んだことない人が多いかもしれない。

まずは、1963年のレコードにあった規定文:
レコードから無断でテープその他に録音する事は法律で禁じられております。

よく知らなかったのだけど、この時代の日本の著作権法では、テープレコーダー等の機械を使って複製することは違法行為だったらしい。へー、という感じ。

続いて、1983年のレコードにあった規定文:
このレコードを賃貸業に使用することを禁じます。また無断複製は法律で禁じられています。

レンタルレコードというものが大流行しつつ、そういう行為が合法なのか否かでもめていた時代。この後、1984年に著作権法が改正されてレコード会社等に貸与権と報酬請求権が認められて、レコードの賃貸業は晴れて合法となった。

時代が飛んで、1994年のCDにあった規定文:
このCDは一定期間貸与非許諾商品ですが、この期間経過後も権利者の許諾なく賃貸業に使用することを禁じます。また個人的に使用する等の場合を除き、著作権上弊社に無断でテープ、ディスク等に録音することを禁じます。

「レコード」じゃなくて「CD」になっているのが時代の変わったことを教えてくれる。で、新譜のレンタルは発売後一定期間の禁止期間が設けられていたので、こういう文言が書かれている。そして、どうやらいつの間にか個人的な用途であれば他の媒体に録音できるようになっていることが示唆されているのが興味深い。あとは、1992年にMDが登場しているので、録音できる媒体がテープだけじゃなくディスクも追加されている。

最後は2000年のCDにあった規定文:
このCDを著作権法で認められている権利者の許諾を得ずに、1. 賃貸業に使用すること、2. 個人的な範囲を超える使用目的で複製すること、3. ネットワーク等を通じてこのCDに収録された音を送信できる状態にすることを禁じます。

注目は「ネットワーク」という言葉が出てきたこと。インターネットでのデータ流通がもはや当たり前の行為になっていることがよく判る。

という訳で、世の中のあり方が変わると、それにつれて著作権もどんどん変わっていくんだけど、その片鱗がレコードやCDのパッケージに記載されている規定文からも判って面白いよねという話でした。  
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April 28, 2012

文化庁は音楽や映画の違法流通を取り締まるのじゃなくて合法流通の拡大を目指すべき

 初っ端の件名から「上から目線」な物言いで、なんだかなという感じだけれど…。

 なんでこんなことを書いているかというと、今度「音楽の著作権はいまどうなっているのか?勉強会」というのに、「エンドユーザー代表(?)」という非常にインチキな肩書きで参加することになったので、音楽にまつわる著作権について、老害なりに色々と考えているから。

 で、ふと脳裏に浮かんだのは、文化庁は著作権を守るために、音楽や映画の違法流通を取り締まる施策を考えるのには熱心だけれど、そういう文化資産を合法的に流通させるためのアイディアは昔ながらの地味で面白みがないものばかりだよねということ。

 本当に、音楽や映画(と、ここではその2つに限ってしまうけれど)を「文化」として考え、その発展を望んでいるのであれば、今のデジタルな時代のメリットを最大限に活かした前向きな施策を行うべきなんじゃないかなと思う訳ですよ。

 じゃ、具体的にはどんなことをすれば良いのか?

 ここから先は予算の問題もあってあまり現実的じゃないけれど、例えば、小中学校などの義務教育機関においては学内施設に限り、生徒は課外時間活動として、日本で流通している全ての音楽や映画を無償で自由にストリーミングで鑑賞できるみたいなのはどうだろう。

 課外活動にするのは、それにより利用を強制しなくて済むし、正規授業のカリキュラムとは一歩離れた形で運営できるから。

 もちろん、作品の内容が小中学生に相応しくない過激なものはレーティングによって排除すれば良い。

 まぁ、こんなアイディアは夢物語でしかないのかもしれないけれど、「違法」について考えるよりも、「合法」についての可能性を考える方がずっと面白いよねということ。

 最後に、上で紹介した勉強会の詳しい説明は、以下のページを参照してください。

「音楽の著作権はいまどうなっているのか?」を知るための勉強会をやります。

 ただ、参加申し込み方法はFacebookからというシステムなので、実はFacebookをやってない自分は申し込めないという(笑)。そういう人でも興味のある人は、是非ツイッター経由で主催者の @yasuyukima さんへ問い合わせてみてください。よろしくです〜。  
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June 11, 2011

どうでもいい話:そういうのは「音楽の力」じゃなくて単なるタダ乗りなんじゃないだろうか

 とある講演会的なものに参加して、色々な人達のプレゼンを聞く機会があったのだけれど、その中の一人がプレゼンのイントロとアウトロで動画を使っていた。

 で、動画を使うだけならそれは別に良いのだけれど、驚いたことにその2つの動画、とある超有名な洋楽曲をそれぞれフルコーラスまるまるで使っていて、ご丁寧にも曲名やアーティスト名まで字幕で表記していた。さらに、そのうちの一つは動画の始まりと終わりにアーティスト本人の写真まで使っていたし…。

 当然ではあるけれど、既存の商業レコード・CDに収録されているような音源を、勝手に動画のBGMにして利用するのは著作権法に抵触するし、それを営利事業目的で使ったら完全にアウト。

 素人が気負って今回はやっちゃいました的な感じなら、まぁ仕方ないよねとも思うのだけど、このプレゼンやってた人は某ビジネスコンサル会社のお偉いさんな訳で、しかも有料イベント。そういうところで、プロがこんな無謀なことはやるのはどうなんだろうと思った次第。

 しかも、追い打ちをかけるように、この人のプレゼンが終わった後、司会の人が何を勘違いしたのか、「◯◯さんのプレゼンは毎回、かっこいい音楽が使われていて素敵です。まさに音楽の力ですね〜」的なヨイショをしたものだから、この人が毎回こうやって有名楽曲を(おそらく無断で)使ってプレゼンしていることがバレてしまった(たぶんそれなりに良いギャラも毎回もらっているのだろうね)。

 なんというか、こういうのって単なるタダ乗りに見えて、すご〜く嫌な感じがした。ま、ビジネスコンサルと言ったって、著作権に詳しいとは限らないのだけれど……。

 ちなみに、音楽を動画に合わせて使うことを業界用語では「シンクロ」と呼ぶ。で、外国曲(いわゆる洋楽)をシンクロするためには、本国の著作権者に直接許諾をとる必要がある(JASRACは邦楽には対応可能だけれど、洋楽には対応できない)。それに加えて、既成の録音された音源だと、レコード会社にも許諾をとる必要がある。ビートルズみたいな超大物の音源だと、当然その使用料たるや莫大な額になるので、最近のCMで有名楽曲が使われる時にはソックリさんのカバー演奏が多かったりするのもそれが理由。

 シンクロ権については、知財関連に詳しい弁理士・栗原さんの書かれたブログエントリー「そもそも何で国内曲とか外国曲とかややこしいことになっているのか?」が参考になるので、興味のある人はご一読を。


4062880563フリーライダー あなたの隣のただのり社員 (講談社現代新書)
河合 太介 渡部 幹
講談社 2010-06-17

by G-Tools
  
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March 02, 2009

日本文芸家協会が動いた

 時事通信の報道によると、「日本文芸家協会が手続き代行へ=米グーグル書籍検索システム参加で」ということになったらしい。

 おそらくこの記事へのパーマリンクはすぐに消えてしまうだろうから、要点の部分を以下に引用しておく:

米検索エンジン最大手グーグルの蔵書デジタル化システム「ブックサーチ」をめぐり、著作権侵害を恐れる米出版社協会などが同社と争っていた裁判の和解を受け、日本文芸家協会は2日、和解の趣旨に沿って同システムに参加するかどうかの意思表示手続きを代行することなどを決めた。(中略)日本文芸家協会は今月中旬をめどに会員や関係者ら約4800人に手紙を送り、システム参加の意思や、既にデータベース化された書籍の補償金を受け取るか削除するかなどを聞き、同社への手続きなどを代行する。

 昨今の出版業界の凋落を受けて、もはや自分達自身で表現の場を確保するしかないという思いが、こういう形になったのだろうか?

 ともかく、これまでの検索エンジンと著作権にまつわる様々なゴタゴタを考えると、これは「歴史的な事件」と言えそうだ。  
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February 28, 2009

公取委 vs. JASRAC、仁義なき戦いの始まりw

 公取委がJASRACに対して放送に関わる音楽の包括利用許諾契約について独禁法違反で排除命令を出した訳だけど、これって広範囲に影響がデカイので、今後の成り行きが非常に気になる。(ちなみに、著作権絡みの事件に関するソースは、新聞社系よりもIT情報系の方がまとまっていて便利でしかも正確だったりするので、個人的にはITmediaとかINTERNET Watchあたりがお薦め。)

 で、勝手に分析して極論しちゃうと、放送における音楽の包括契約利用が無くなっても、JASRACとしては別にそれで音楽使用料徴収源が無くなる訳じゃないから、全然困らないのだろうなと思う。ま、新しい徴収システムを作るのはかなり大変なんだろうけど(笑)。

 この件で一番困るのは、ここ数年で破壊的に収入が減りつつあるテレビ局やラジオ局のはず。

 まだ儲かっている頃にこの問題が出ていたのであれば、単に金で解決できたとことなんだけれど、今となってはどうやって人件費をはじめとした諸々の支出を減らすかが大きな課題となっている時勢であり、さらなる手間と金を必要とされるような「全曲報告」なんて制度を法律で義務づけられた日には、マジで大手キー局の一つや二つが倒産するキッカケの一つぐらいにはなってもおかしくないような気がする(ま、それは大袈裟か…)。

 とりあえず、公取委がどこまで窮鼠(これはJASRACじゃなくて放送局ね)を追い込むつもりなのかは知らないけれど、妄想を激しく掻き立ててみれば、総務省や経産省や文化庁の中の人達が裏で取引してシャンシャンなんていう事態も単なる絵空事ではないような…。

 何というか、ごくごく近未来の、包括利用許諾契約無き時代のテレビ番組で流れるBGMは、著作権フリーのありがちで聞き飽きたような楽曲か、はたまた、芸能事務所と音楽出版社とレコード会社の思惑でぶちこまれたタイアップ楽曲ばかり、なんてことになる可能性は否定できない。さらには、下手すると昔の番組の再放送はBGMの関係で不可能という事態も発生しそうだ。

 もっとも、ここに書き散らかした話は、中途半端に著作権ビジネスの端っこをかったことがあるだけのド素人の与太話なんで、一切信用しないようにね(笑)。  
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January 07, 2009

音楽配信における事実上のDRM完全終了が決定(ただし日本は除く?)

 AppleがMacworld基調講演において、2009年第1四半期の終わりまでに、iTSで販売する楽曲全てのDRMを廃止すると発表した。

 この施策が果たして日本市場も対象になっているのかどうかは不明。

 しかし、欧米市場における音楽配信ビジネスということに限って見れば、遂にDRMの事実上の絶滅が決定したと考えるのが妥当だろう。

 翻って、日本は独自文化の世界(笑)だから、今後も頑張ってDRMを継続するということになるのかもしれない。

 で、個人的には、ほぼ間違いなく出ると噂されていた新型Mac miniが発表されなかったことが非常にショックだったりする。  
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November 26, 2008

iTSでEMI以外もDRMフリー音源を販売開始

 Mac Rumorsの11月25日付け記事「More DRM-Free Music and iTunes Beatles Update」によると、EMI以外の大手レーベルも、iTunes StoreにおいてDRMフリーのiTunes Plus音源を販売開始した模様。

 米国サイトにおいて現時点で確認されているのは、Sony MusicとWarner Musicの2社の音源の一部。今後Universalもこれに追随するのではないかと見られているようだ。(新しい情報を文末に追記)

 当然ながら日本のiTSにおいてSME音源は販売されていないのだけれど、今確認したらワーナー音源に関しては、少なくともニール・ヤングの楽曲の一部(「Heart of Gold」、他)がすでにiTunes Plus(DRMフリー)となっている。かなりビックリした(笑)。

 で、ビートルズのiTS参入遅延の件(日本語の情報だとITmedia扱いのロイター記事「ビートルズのiTunes Store進出は『行き詰まり』」が判りやすい)に関しては、個人的にはビートルズ側がDRMフリー販売を嫌がっているのではないかなと勝手に推測している。その根拠はポール・マッカートニーの「(EMI幹部が)求めているものを、われわれはまだ提供できる態勢にない」という言葉。EMIはすでにDRMフリーを社是としているぐらいだから、ここが一番両者の思惑で食い違う部分になるはず。もっとも、印税率だとか、トラックばら売りだとか、他の件でも色々と揉める原因になりそうなことはある訳だけど…。

 PS. フォーラムの読者投稿によると、すでにUniversal音源でもiTunes Plus化されている由。日本版iTSで確認したところナイン・インチ・ネイルズの楽曲でもiTunes Plus音源を発見。つまり、ユニバーサル音源もDRMフリー化へ動き出したということになる。

 PPS. ちょっと先走ってしまったみたい。NINの「The Slip」はユニバーサル扱いじゃないので、日本のユニバーサル音源に関してはDRMフリーになっているのかどうか現時点では不明。  
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November 17, 2008

EMI首脳陣がDRMなどについて語る

 Billboard.bizの11月14日付け記事「Billboard Q&A: Top EMI Music Execs Talk」は、主要なEMI重役へのインタビュー。ちょっとした長文記事で、自分はちゃんと読んではいないのだけれど、色々と興味深い話が書かれているようだ。

 インタビューに参加しているのは、CEOのElio Leoni-Sceti氏、北米・英・アイルランド地区A&RトップのNick Gatfield氏、デジタル部門トップのDouglas Merrill氏。

 斜め読みして特に目を引いたのは、EMIがDRMフリーを断行したことについての質疑応答パートで、Merrill氏がDRMフリーにした結果は「好調だ(Great)」と答えている。同氏自身は当初DRMフリー施策に懐疑的だったがそれは誤りだったとし、DRMは音楽ファンにとって全く価値の無いものだと結論しているのが興味深い。

 一方で、DRMフリー施策は、海賊行為に対してポジティブにもネガティブにもそれほど大きな影響は与えていないようだ。詰まるところ、そういうことをやる連中は、DRMがあってもなくても関係ないということだろう。

 デジタル化によってレーベルは今後、音源を売るということよりも、アーティストとファンがお互いにコミュニケーションをとるためのプラットフォームのような場になることが重要になっていくと、Merrill氏は語っている。

 同記事ではまた今後のリリース計画の一部が明らかにされており、来年にはビースティ・ボーイズの新譜も出る予定とのこと。  
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October 24, 2008

フェアユースをめぐって郵政民営化並みの激しい攻防戦が始まる?

 日経の10月24日付け記事「著作権、『公正目的』なら利用許諾不要に 知財本部が骨格」は、毎度お得意なフライング報道?

公正な利用法であれば著作権侵害としない考え方は「フェアユース規定」と呼ばれる。政府は29日の専門調査会に「日本版フェアユース規定」の原案を提出。文化庁での議論を経て、早ければ来年の通常国会に著作権法の改正案を提出する方針

 ほほう、文化庁で議論ですか…。

 これは偏見に満ちた個人的な意見でしかないけれど、基本的に著作権というのは文化庁にとって非常に大きな利権である訳で、その適用範囲を拡大したい意図はあっても弱体化は許せないはずなので、こういう「フェアユース」みたいな提案は事実上の無効化を目指して大いに頑張るのじゃないだろうか?

 ただ、著作権は、放送利権関係者=総務省も大いに関わっているし、さらには当然経産省が絡んでくるので、実は一旦国会という俎上に載ってからが、郵政民営化並みの激しい攻防戦を展開するのかもしれないと、勝手にwktkしてしまう自分がいたりする(笑)。  
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October 15, 2008

80年代のヒット曲に関する著作権で今頃揉めているとか…

 Billboard.bizの10月14日付け記事「Copyright Battle Over Eighties Hit 'Down Under'」によると、メン・アット・ワークによる80年代の大ヒット曲「ダウンアンダー」の著作権で今揉めているらしい。

 揉めている原因は、曲の中で聞こえるフルートのリフのメロディ。確かにあれは耳に残る。実はあのメロディーが、1930年代にMarion Sinclairという人の作った「Kookaburra」という曲からのものであるらしい。(ちなみに、Kookaburraとはワライカワセミの意)

 参考用にYouTubeの動画を貼り付けてみる:



 しかし謎なのは、なぜ今頃になって揉めているのかということ。30年近く前に流行った曲に対して、80年近く昔の曲の著作権で訴えるというのがスゴイ訳だけど、同記事によると以下のような経緯のようだ:

Lurie launched proceedings when the similarities were raised during a September 2007 episode of the local ABC TV quiz show "Spicks and Specks." During the show, the question was posed, "What children's song is contained in the song 'Down Under?'" The answer, according to the program, was "Kookaburra."

"I wasn't watching that night, one of the few nights I missed it," he notes. "My emails and phone lit up the next day with people advising me of that. That was the first I knew of [the connection]."

 なんと、テレビのクイズ番組でネタにならなければ、この訴えは起きていなかったということらしい(笑)。メン・アット・ワークのメンバー達は、このテレビ番組を恨んでも恨みきれないかも…。

B0000277D7Business as Usual
Men at Work
Sony Budget

問題の曲(!?)が収録されたアルバム。当時「Who Can It Be Now?」は大ヒットで、ベストヒットUSAでもPVがヘビーローテーションされた(まだ日本にはMTVが無かった時代でもある)。
  
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October 14, 2008

米国で新しい海賊版対策法が発効

 Billboard.bizの10月13日付け記事「Anti-Piracy Law Goes Into Effect」によると、米国の連邦レベルで映画や音楽の海賊行為に対する規制強化を行うための法案に対して、ブッシュ大統領が署名したとのこと。

 これにより、新たに大統領直属の知財専門家が、米国内外における著作権問題の対策を提案することになる模様。また、著作権違反への対応も従来より厳罰化されるようだ。

 もちろん、この法案に関しては、全米レコード協会と米国映画協会の強力な後ろ盾があったという。

 米司法省では、このようなやり方は混乱を招くとして反対していたという点が気になるところ。

 今後の予想としては、当然、著作権保護期間に関する米国方針のグローバルスタンダード化の働きかけ強化などがありそうな訳で……。  
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August 21, 2008

違法でもタダの方がウレシイ?

 楽器関連の話題が豊富なブログサイト「Music Thing」の管理人Tom Whitwell氏のTwitterにおけるコメント経由で、Wired発起人でもあるKevin Kelly氏のブログ「The Technium」の8月19日付けエントリー「Why People Pirate Stuff」、そしてそのネタ元となったゲーム開発者Cliff Harris氏による文章「Talking To 'Pirates'」を読む。

 Harris氏は、自分のブログで「Why do people pirate my games?(なぜ人々は私が作り販売するPCゲームを違法コピーで手に入れるのか)」という問いかけをすると共に、そのブログエントリーをSlashdot等のフォーラムへ投げかけ、またそこから多数のオンラインニュース等に記事として取り上げられたようだ。その結果、非常に多くの回答がユーザーから得られたという。

 回答から、人々が違法コピーを手にする理由は以下のようなパターンに分類されるようだ:

1)The semi-political ones(一見政治的だが実は単なるいいがかり、いわゆる「中二病」「ダウンロード厨」的なものか…)

2)Money(値段が高すぎる)

3)Game Quality(ゲームの内容やグラフィックがショボイ)

4)DRM(コピープロテクトがウザイ)

5)Digital Distribution(購入するための手間が面倒)

 この結果、Harris氏は1番目の理由以外に対しては、真摯な姿勢で臨みビジネスモデルの改善を決意。早くも既発ゲームの価格を従来の半額にすると共にDRMの廃止を実行したという。

 そのようなHarris氏の決断に対して、Kelly氏は、今後ゲームの売上にどのような影響が出るのか注目したいとしている。

 自分が興味深いと思うのは、ここではPCゲームという一つのコンテンツプラットフォームだけが話題になっているけれど、実はこの話、今やPCゲームに限らず他の全てのデジタルコンテンツ、さらにはもしかするとデジタル化されていないアナログなコンテンツにも当てはまる事象だということ。例えば、音楽ソフトでも低価格化やDRMフリー化が進んでいる。

 しかし、低価格化とDRMフリー化、そして、流通や購入決済システムの簡便化を図ったとしても、それだけで全てのコンテンツの違法コピー共有問題は解決できないだろうと思う。たぶん、それ以上の何か、あえて言えば、個人が抱く「社会性」みたいなものをどうにかしなければならないような気がしなくもない。ただ、それは色々と難しいのだろうなと感じるのは、自分が悲観的すぎるのかな…。


 PS. はてブ経由でコメントをいただいたのだけど、自分の書き方が拙かったことを反省中。今回の話のポイントは、正規に流通して簡単に入手できるはずの現行製品(PCゲーム)が、不正コピーされてしまうのはなぜかということなので、既に入手困難なもの(欠品、廃盤、製造中止、etc.)についてはまた別の議論が必要と思われます。まぁ、根っ子にある問題は色々とかぶっている部分もあるのでしょうが…。

 PPS. 日経の記事「PSP好調を蝕む「パンドラバッテリー」の猛威」を読む。海賊版ゲームの現状を知りかなり驚いた…。
  
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July 25, 2008

商業ソフトはとりあえずコピーネバーで良いんじゃね?

 あくまで個人的な雑感でしかないけれど、ダビング10にまつわるゴタゴタ騒ぎは、非常に不毛というか、一見「本音」で熱い(?)議論が交わされているようでいて、実は依然として「建前」論に終始している様が、仕込みの悪いプロレスを見させられているようで、かなり不愉快だったりする。

 ハードウェアメーカー側としての言い分を考えるに、事の本質は、日本以外では全く用を為さない非常にローカルなDRMのために、シビアな国際競争で必要とされる開発リソースを割くのはあり得ないという以外に、彼らが不平を言う根拠はあまり考えられない。

 また、権利者側の言い分は、もっとドロドロしていて、文字に書き起こすのが憚られるような複雑怪奇な状況だとは思うけれど、簡単明瞭にまとめてしまえば、既存のソフトウェア販売システム等が機能しなくなってきたので、課金できるチャネルの見直しをしたいという、それだけだろう。まぁ折角なので、ここまで来たことだし、既存のチャネルでは一度本当にコピーネバーでやってみるのもいいと思う。もしかすると、割と何の問題もなく、誰にとってもハッピーな新しいビジネスモデルが見つかるかもしれない。ま、タイムシフトやプレイスシフトが使えないとなると、辛いのはかなり辛いんだけどね…。

 それにしても、私的録音録画補償金制度のグダグダの発端は、DATという、上手くすれば音楽再生・録音環境の歴史を変えたかもしれない鬼っ子ハードの登場にあったことは明かなんだけれど、それよりも、実は、貸しレコード商売の合法化が大きな根っ子になっているのだと思う。

 貸しレコードを聴くのは良いとして、あれを「私的録音」という名目で半ば合法的にコピーできるようにした上で、レコード売上を伸ばし、楽曲使用料の増収を実現したレコード会社やJASRAC、そしてそれを認めた行政関係者は、ある意味で自業自得の自縄自縛なダメダメなのだ(って意味不明の日本語だな…)。

 私的録音が暗黙の前提の貸しレコード(今では「レンタルCD」とスマートな呼び名になって、CCCD盤が増えているようだけど)が、いまだに合法ビジネスであり、レコード会社やJASRAC等の収入の一部をシッカリと支えている現実がある限り、DRMがどうのとか、私的録音録画補償金制度がどうのとか言ってるのは「お門違いなんじゃないの?」というのが、エンドユーザーであり、また一度はそういう権利商売の一端で飯を食わせてもらった経験があるオレの正直な感想。

 ちなみに、この手の話をすると、レンタルCDやDVDがあるから、お金のない子供でも優れた商業コンテンツを楽しめるんだというツッコミがあるけれど、それと、借りてきたソフトをデッドコピーするのは全然別の話だし、さらにそういうコピーをネットで「共有」して、さも正義は自分にあると勘違いしているようなコピーレフト野郎は さも正義は自分にあるとコピーレフトを気取って勘違いしているようなクソ野郎はもう死んでもバカは治らないという感じだよなぁ…。はてブで「コピーレフト」という用語の使い方がおかしいという指摘があったので書き直してみた)  
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July 11, 2008

もはやどうでもいい話:ダビング10をめぐる素敵な冒険w

 上記のタイトルは単なる洒落で特に意味は無いんだけど、このグダグダな展開は、ある意味モンティ・パイソンのエピソードの一つを見るような滑稽感があるねぇ:

「経緯は知らぬ」「言い逃れだ」・コピー補償金問題、10日再開の審議は大荒れ(日経IT-PLUS)

“iPod課金”議論、振り出しに 権利者とJEITA、小委員会で激論(ITmedia)

iPod課金先送りへ、権利者とJEITAの対立で補償金議論振り出しに(INTERNET Watch)

 非常に驚くべきことに、という程でもなく以前からそうなんだけど、今回も大手メディアのほとんどはナシのつぶてで、ネットニュースメディアだけが取り上げる、でも結構重要な「著作権」にまつわるお話。

 それにしても、いまだに著作権行政が、文化庁というあまり問題処理能力のなさそうな人々に委ねられている事実が謎ではありますなぁ…。やっぱり、経産省辺りへ移管されるための、一つの儀式だったりするのだろうか、この心底ダメなやりとりは?

 あとは、面白いというか、興味深いのは、ダビング10に関連する非常に重要なプレイヤーの一つであるはずの放送業界が、この議論には全く関与していないという事実。まぁ、彼らは、自分達の身が安全な総務省仕切の場でしか行動しないという、わかりやすい話でしかないのだろうけれど。

 とりあえず、見切り発車でスタートしたダビング10という、実は単なる「コピーワンス×10」でしかない規格が、これから後々、さらに様々なトラブルを引き起こすであろうことは、火を見るよりも明らかな訳で、やっぱり素敵な冒険は終わりそうにないっすね、というところで、お後がよろしいようで…(お囃子が流れて退場)w  
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June 13, 2008

米裁判でオークションサイトにおけるプロモCD転売が合法判決

 Billboard.Bizの6月12日付け記事「Court Allows Promo CD Sales」によると、オークションサイトにおけるプロモ用CDの転売行為に対して、米国連邦裁判所が合法という判決を出した模様。

 今回の判決に至った根拠のあり方が非常に興味深い:

The court then agreed with Augusto that promo CDs are a gift under federal law.

The Postal Reorganization Act prohibits the mailing of unordered merchandise without the prior express request or consent of the recipient. The recipient may treat merchandise received without such request or consent as a gift - to keep, use or sell.

 米法では、受取人が能動的な取得行為(例えば「購入」)をすることなく受け取る商品は贈答品と解釈されるため、レコード会社などから宣伝のために勝手に送られてくるプロモCDも当然ながら贈答品となる。

 そして、米国著作権法においては、合法的に取得された商業著作物の複製頒布物であれば、著作権者の権利は消尽するというファースト・セール・ドクトリンが適用されるため、贈答品であるサンプルCDも同様な扱いとならねばならない。

 つまり、サンプルCDは自由に転売可能ということらしい。

 訴訟を起こしたUniversal側は、サンプルCDは「ライセンス(license)」によって貸与したものであり、サンプルCDが不要になれば返却されるべきという論旨を展開したようだが、裁判所はそれを認めなかったようだ。

 当然ながらUniversalは控訴を検討中。

 日本でも同じようなことは起きていると思われるけれど、裁判が起きる前に、レコード会社の要請(または圧力?)により、オークションサイト側が自主的に出品者のアカウントを削除するなどの対策を講じるような気がする。オークションサイトの立場が問題になることなく(おそらくレコード会社からの働きかけは無視したのだろう)、レコード会社と出品者が直接裁判で対決するというのが、いかにも訴訟大国ならではなのかも…。  
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May 08, 2008

文化庁は商業的な著作物に関わるのを止めれば良いと思う

 朝日新聞が5月6日付けの記事見出しで「iPodに「著作権料」上乗せ 文化庁提案へ」と特定商標を使って煽りすぎの件はともかく(笑)、文化庁主導で存在する「私的録音録画補償金」ってのは、やっぱり変だと思う。

 何が「変」なのかと言えば、文化庁という営利活動(ビジネス)に疎いポジションの官庁が、商業音楽や商業放送にまつわる団体・企業の利権を守るために、わざわざ審議会まで設けて牽強付会な施策を取りまとめようとしている点だ。

 五十歩譲って、「著作権法」という肝の部分は従来通り文化庁におまかせするとしても、著作権という概念の「知財」で商売する部分については、民間に全てを任せるか、もしくはこれも百歩譲って役所が関与しなければならないとすれば経産省辺りの競争原理に基づいたビジネスを理解している官庁がルールを運用していくべきなんじゃないかと思う。二つの官庁が関われば、それによる弊害もあるだろうけれど、今のような暴走も阻止できるのじゃないだろうか?

 なんだか、今の著作権にまつわる行政は、完全に商業著作物だけのものに成り下がっていて、文化庁がモットーとする「文化」を守るための礎とかには全然なってない。

 それに、文化を守るとか偉そうなことを言っている某著作権管理団体にしても、本来ならば著作物の権利使用料の徴収および分配だけが役目であって、著作権警察みたいな行為や発言を行うのは、なんだか行きすぎの感が強い。しかも、世にある著作権者団体の多くは、非商業著作物に関しての権利については全く頓着してないわけで、それで文化を守るとか言われてもねぇ…。

 で、役所と言えば、巷で話題になっている本「さらば財務省!」を読んだ。

4062145944さらば財務省!―官僚すべてを敵にした男の告白
高橋 洋一
講談社 2008/03

序章:阿部総理辞任の真相
第一章:財務省が隠した爆弾
第二章:秘密のアジト
第三章:郵政民営化の全内幕
第四章:小泉政権の舞台裏
第五章:埋蔵金の全貌
第六章:政治家 vs. 官僚
第七章:消えた年金の真実
終章:改革をやめた日本はどうなる

 この本、官僚や公務員、そしてそういう「親方日の丸」的なシステムに依存して生きる人々にとってはまさに「悪の教典」と言えそうな内容(笑)。かなり面白かった。改めて、郵政民営化が実現したのは、それが結果的に良かったのか悪かったのかの判断は別にして、まさに稀に見る「奇跡」だったのだなと再認識した次第。著作権などの知財関連にまつわる行政がグダグダなのも、この本を読めばその理由が容易に想像できるし、おそらく文化庁の中の人達は社会保険庁並みなんだろうなと思ったりして…。


 PS. ITmediaの5月8日付け記事「文化庁『iPod課金=補償金拡大ではない』 JEITAと対立」の中で、文化庁は補償金制度縮小を目標としながらも暫定処置として「音楽CDからの録音」と「無料デジタル放送からの録画」に関する補償金は継続することを主張しているとある。しかし、その2点以外で私的な録音や録画をするような同制度の対象物って何かあるのだろうか? あえて挙げれば、無料アナログ放送からの録画があるのだろうけれど、地デジ移行を考えれば数年先には間違いなく無くなるフォーマットだから関係ないだろうし…。つまりは、事実上の私的録音録画補償金制度の死守宣言をしたようなものだよな(笑)。
  
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May 06, 2008

とうとう始まった:NIN最新アルバム「slip」

 「P2Pとかその辺のお話」さんの5月5日付けエントリー「Nine Inch Nails、ニューアルバム『The Slip』を公式サイトで完全無料ダウンロード配信」で紹介されていたのを読み、早速ダウンロードしてみた。

slip cover photo

 落としたのはAppleロスレス形式で、BitTorrentを利用。当然ながらファイルにDRMはかかっていない。

 以前はNINの場合、イケイケな曲が好みだったのだけど、自分が歳をとったせいなのか、今回のアルバムでは内省的な曲の方が好きだった。「Lights in the Sky」とか「The Four of Us are Dying」辺りがツボ。

 それにしても、これだけちゃんとした作りで全くの新作が、クリエイティブ・コモンズのライセンス形式(表示-非営利-継承)によって無料配布されるとは、遂に始まってしまったというしかない。

 ちなみに、トレント・レズナー曰く「we encourage you to remix it(リミックス推奨)」らしいので、そういうのが好きな人は是非とも挑戦すべし。  
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April 25, 2008

DRMにまつわる美談、もしくはどうしようもない話

 CNET Japanの4月24日付け記事「マイクロソフト、MSN Musicで購入済み楽曲を転送できなくなる問題について釈明」は、DRMという著作権保護技術がいかに不毛なものであるかを教えてくれる典型的な話だ。

顧客は購入した楽曲を、認証済みのコンピュータ上では、そのハードウェアが利用可能な限りは再生できることを意味しているが、8月31日の期限後は、新しいコンピュータへ楽曲を転送することはできなくなる。

 ネガティブに解釈すれば、マイクロソフトはDRMの互換性を維持するのが面倒になったので、DRMの認証サポートを中止するということらしい。

 これではまるで、正当な代価を支払って著作権を守るためのDRM付き音源を購入したユーザーの方がバカだったということになる。

 今、日本では、文化庁主導によって、各種コンテンツの著作権保護をDRMで実現しようという動きがある(例えばコチラの記事等が参考になる)。果たして、MSN Musicのユーザーが体験したのと同じような不幸な事態が起きないという保証はあるのだろうか?  
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April 13, 2008

どうでもいい話:ニコ動UGCの問題点

 ニコ動見てると、たまにとんでもなくハイクォリティーな作品に出くわす。例えばコレ:



 いわゆる「アイマスMAD」と言われるもので、既成音楽作品(大抵は商用音楽)に合わせて、「THE IDOLM@STER(アイドルマスター)」というゲームソフトの画像を上手にはめこんで仕上げたビデオ作品。

 知らない人が見たら、単にプロモビデオ風アニメだよねぐらいにしか思わないかもしれないけれど、本来は全然違う歌に合わせて動いているゲーム画面から、自分の選んだ曲に最適な踊りやリップシンク部分をゲーム画面から拾いだして編集している訳で、かなりの忍耐とセンス、そしてビデオ編集技術が要求される技だったりする。

 とくに、上記で例として挙げた作品「アイドルマスター Perfumeパーフェクトスター・パーフェクトスタイルPV風R2」は、初っ端の3人が円になって回るエフェクト画面など、もうゲームには全く存在しない絵であり、相当に高度なビデオ技術がなければ、実現しようがないものとなっている。ちなみに、この作者は、コメントによれば「プロ」ということらしい。何のプロかは判らないけれど、映像事業関連辺りのプロなのだろう…。

 さて、ここで気になるのは、プロが自分の作品を発表する場として、ニコ動を使うのは良いとしても、現行著作権法に照らし合わせてみれば、このMADの場合、商用音源の無断二次使用であり、完全に違法行為であるということ。

 自分はMADみたいな遊びを100パーセント否定するつもりはないけれど、プロが自分で自分の首を絞めるような行為をしているのはどうなんだろうと思うし、そういうプロの作った作品を皆で「素晴らしい」とコメントで絶賛するのもなんだかなと感じる。

 あと、こういうのを見て「やっぱりプロには勝てない」的な風潮がもし蔓延してしまうとすると、ニコ動的にはつまらない。ま、すでにアイマスMADに関しては、そういう傾向があるらしい。

 UGCの面白さは、既成の価値観にとらわれないことにあるのは十分に理解した上で、じゃ、こういうMADみたいなものが、既存コンテンツホルダーと合法的に競合するためにはどうしたら良いのだろうかと思い悩む今日この頃。ま、才能の無駄遣いだからこそ面白いと言えば、それまでなんだろうなぁ…。  
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January 25, 2008

世界規模で見た音楽配信の現状、そして、くたばれ「知財」という極論

 Billboard.bizの1月24日付け記事「Healthy Digital Biz Needs Gov't, ISP Help, IFPI Says」(見出しが酷いな…)で取り上げられたIFPI(国際レコード産業連盟)の発表によると、全世界における2007年度のデジタル音楽の総売上は29億ドル。これは対前年比で40パーセント増となるらしい。

Digital formats now account for roughly 15% of the global music market, up from 11% in the previous year, the trade body notes in its 2008 "Digital Music Report," released today. Nowhere is the impact of digital music's presence felt more than in the United States and South Korea. In the U.S., 30% of all recorded music sold is from online or mobile sources, while in South Korea, more than 60% of the market is created by digital formats.

 そして、全世界の音楽市場におけるデジタル形式販売の締める割合は約15パーセント。世界でもっともデジタル音楽販売が普及しているのは韓国(同国内市場の60パーセント)、次いで米国(30パーセント)だそうな。

 デジタル音楽販売の普及率については、海賊版の扱いをどうするかが微妙になるけれど、ロシアや中国が韓国と米国の間に位置してきそうな気がしなくもない…。

An inaugural global download sales chart is published in the report, topped by Avril Lavigne's "Girlfriend (RCA)," which sold 7.3 million tracks through the year. The global digital market is split roughly 50/50 between online and mobile sales.

 2007年にデジタル形式で最も売れた音源は、Avril Lavigneの「Girlfriend」で、730万ダウンロード。世界規模でデジタル販売の流通経路を見ると、PCとケータイが半々らしい。日本の場合、PCベースの音楽配信が普及する可能性はもはや絶望的に低いのが現状であるけれど、諸外国もいずれはそういう流れになりそうな予感がする。

 で、この記事で気になる点は、「音楽配信の現状」がどうのこうというよりも、今後は政府やISPによる著作権保護の助けが必要だという趣旨の発言が、IFPIのレポートの中で登場していること。

"The last year has finally seen the wind of change blowing through old assumptions about the role Internet service providers should play in protecting copyrighted content. ISP responsibility is becoming an accepted idea," Kennedy says in the report's introduction.

 すでに米国では、AT&Tが著作権保護を理由にすべての通信をフィルタリングすることを検討していたりする訳で、同じことがいち早く日本で実現する可能性もあり得なくはないと、自分は密かに危惧している。

 こういうと語弊があるのかもしれないけれど、たかが娯楽産業を保護するためだけに、著作権という「錦の御旗」を振りかざされて、必要以上に個人のプライバシーを監視されるのだとすれば、それは不愉快以外の何ものでもない。

 そんなことが必要なのだとしたら、商業音楽や商業映画、そして商業出版なんてものは、この地球上から一切合切無くなってしまった方が、むしろスッキリするような気がする。まさに、くたばれ「知財」な状況なのだなぁ。

 もちろん、勘違いして「コピーレフト」を標榜してるようなダウンロード厨が大手を振ってのさばっているのも大いに問題なのだけど…。  
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January 16, 2008

MIAUシンポジウム「ダビング10について考える」を傍聴してきた

 なんとか時間を都合できたので、MIAUによるシンポジウム「ダビング10について考える」を傍聴してきた。

 詳細については、各メディア(特にITmeidaINTERNET Watch辺り)で報道があると思われるので、ここで下手くそなレポートをするつもりはないけれど、とにかく池田信夫氏の弁舌が凄くて、他の講師の方々を圧倒。ライブならではの迫力だった…。

 個人的に思ったことは、シンポジウム中に何度も池田氏が指摘されていたように、今の放送行政のあり方というのは、視聴者(つまり末端の国民)の都合は全く関係なくて、全てが放送事業者と関連ハードメーカー、そして利権に関わる偉い人達だけのためにあるのだろうなという感がすごく強いということかな。

 ともかく、「諸悪の根源はB-CAS」というネタは、これからしばらくネットの話題になるのかも(笑)。いわんや、もしB-CASが廃止に追い込まれたりするなんてことがあるとすれば、その功績のなにがしかは池田先生に負うところがあるのは否定できないような…。

 PS. 池田氏がご自身のブログでB-CASに関するエントリー「B-CASは独禁法違反である」をアップ。必読。

 PPS. ITmediaのレポート「『ダビング10』とは何だ――MIAUがシンポジウム」がアップされた。色々と今まで公にされていなかった事実が講師陣によって明らかにされている。これも必読。
  
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December 27, 2007

文化庁って何を考えているのだろう?

 MIAUの緊急シンポジウム「ダウンロード違法化の是非を問う」を傍聴してきた。

 明日にはITmediaやINTERNET Watchで詳細なレポートが掲載されることだろうから、ここで素人の下手くそな話を書く気はないけれど、それにしても文化庁って一体何を考えているのだろうと思わずにはいられない。

 今日あそこで聞いた話をまとめて自分なりに解釈するなら、文化庁は性善説を信じているからこそ、あえて性悪説に基づいた法律を作ろうとしているということになるらしい。しかし、権利者にとってみれば、そこに善も悪も無い訳で、ただ自分達がより有利な立場になればうれしいということしかないだろうに…。

 「著作権法第30条第1項が無くなるということは、法が家庭に介入すること」という話は、まさに「1984年」であり「未来世紀ブラジル」そのまま。これはwktkするしかない悪夢だよなぁ(笑)。

 そして、「情報通信法(仮)」は成立するのだろうか……?  
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December 03, 2007

独グラモフォンの音楽配信に関する続報:ちょっと残念

 前回書いたエントリーに「林檎の歌」さんからTBをいただき、そこで米国価格とその他の地域の価格が大幅に異なる(米国:11.99ドル≒1,330円、その他:11.99ユーロ≒1,950円)ことを指摘されていたのが気になったので、直接グラモフォンのカスタマーサービスへメールで問い合わせてみた。

 質問の内容は「米国とその他で値段が極端に違うけど、これは間違いじゃないの?」という単刀直入なもの。

 それに対する回答は、残念ながら「間違いじゃない。この価格設定はそういうものである(It is the standard pricing policy)」とのこと。

 う〜ん、ちょっとなんだかなという感は拭えないかも。ま、今後の展開に期待ということで……。  
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December 02, 2007

DRMも国境も越えた:今一番ラディカルな音楽配信はクラシックから始まる!

 Gizmodoの11月30日付け記事「Deutsche Grammophon Shows How Digital Music Stores Should Really Work」は、現在の音楽業界にとって非常に衝撃的なニュースと言えそう。

 同記事によれば、独グラモフォンがオンラインのデジタル音楽ショップを開店したらしい。同オンラインショップが扱う音源は、ファイル形式がMP3でビットレートは320kbpsの高音質。しかも全てがDRMフリーとなる。

 さらにスゴイのは、リージョンフリーということ。つまり、世界中のユーザーが同ショップから自由に楽曲データを購入できるのだ。ことクラシック音源だけに関して言えば、これからはAppleもNapsterもAmazonも不要になる。

 価格は、1曲単位が1.29ドル、アルバムが11.99ドル。標準的なアルバムにはPDFのブックレットも付属する模様。

 ちなみに、独グラモフォンはユニヴァーサル傘下なんだけど、本家のユニヴァーサルが音楽配信戦略で色々と迷走していることを考えると非常に画期的な話。もしかして、ユニヴァーサルは全部この方式に転換してくるつもりだったりして?  
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September 07, 2007

ダウンロードすれば有罪という世界がやってくる可能性

 ITmediaが釣りみたいな記事を書いているなぁと思っていたら、やはり壮大な釣りだったようで、それに対する反論を津田氏がブログで「『ダウンロード違法化/iPodの補償金対象化』がほぼ決定した件と、ITmediaの記事で抜粋されている発言についての補足」として書かれている。

 同氏のブログを読むと、著作権をとりまく状況はかなり厳しいものになりつつあり、最悪の場合、「著作権法30条を改正して、ネット上に上がっている違法著作物のダウンロードを私的複製の外に置いて、ダウンロードする行為を犯罪」と見なすよう法改正される可能性もあるようだ。

 もっとも、この件に関しては、実際そういう風になったとしても、それが実効性のある法律になるかどうかはまた別の話であり、そのあたりの問題点も津田氏は上記のブログで説明されているので、気になる人はそちらを読んでほしい。

 なお、文化庁では、この問題に関するパブリックコメントを10月に募集するようだ。

 ただ個人的にはちょっと悲観的で、私的録音録画小委員会のような審議会にしても、パブリックコメントにしても、どうも先に「結論ありき」でやっていて、議論や意見募集という行為は、単に広く社会から意見を求めましたよというポーズを見せるためだけにあるような気がして、なんだかやるせない気持ちになってしまう。

 ま、それでも、自分の意見は相手に伝えるということを諦めてはいけないのだろうけれど…。  
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September 06, 2007

新しい著作権の形:つかこうへいの場合

 「point of view point」さんが9月6日付けエントリー「つかこうへい、男前」で紹介されているのを読んで知ったのだけど、劇作家のつかこうへい氏が自分の上演台本をWeb上で公開している。

 現在公開中の台本には、同氏の代表作である「熱海殺人事件」や「蒲田行進曲」も含まれいてる。

 注目したいのは、公開されている台本の利用に際して、大型の商業演劇等でなければ、基本的に著作権費用(上演料)を支払う必要がない点だ。

営利を目的としない、2000円〜3000円でやる小劇場や学生さんの小さな劇団等の方の上演料はいりません。自由におやり下さい。お知らせだけ郵送でくだされば結構です。

 また、台本内容の簡単な改変にも対応している。詳細は、同氏のWebサイト上にあるページ「上演台本について」を参照のこと。

 もしかすると演劇は、日本の文化活動の中で、今一番ラディカルな存在なのかもしれない。  
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August 31, 2007

あるDRMの死:ただしアメリカでの話

 米Sonyが遂に、独自DRMシステム「ATRAC」を採用したオンライン音楽ストア「CONNECT Music Service」の終了を宣言した。

 同社はサービス終了に関するユーザー向けのFAQを公開していて、その内容が興味深い:

What can I do with ATRAC content that has DRM (Digital Rights Management)?

For your purchased music from CONNECT, you can burn it to audio CD and re-rip it into MP3 format to continue enjoying it for personal use.

 CONNECTで購入したATRAC形式の音源は、一度CDに焼いてからMP3形式にリップして使えと示唆されている。

 まぁ、確かにそれ意外に方法はないのかもしれないけれど、これじゃDRMの意味がほとんど無い上に、もし大量のATRAC音源を所有していたとすれば、そういう2度の変換作業は大変な徒労となるはず。いやはや…。

 なお、米ソニーが同ストアを終了する大きな理由としては「We are moving to the open Windows Media platform in North America」ということを挙げている。一体、Windows Media形式のどこがオープンなのかは大きな謎(笑)。

 それにしても、まさにこの件に関連する話を、元麻布春男氏が、奇しくも数日前の8月28日に、PC Watchのコラム記事「ついに仕事用環境をVistaに移行:その2」の後半部分で、「プラットフォームの移行とDRMの寿命」として書かれていて、まさにシンクロニシティ! 以下に同氏の問題提起を引用(上記リンク先の記事全文を読むことをお薦めします):

DRMが付与されることで、コンテンツは時間の淘汰を受ける資格を失う。それは作品が消費される商品に成り下がってしまうことではないか。極端に言えば、筆者はそう思っている。

 商業音楽は、「ヒット」という概念が発生した時点から、消費されていくことを運命づけられている。けれど、個人が一つの作品に対して抱く「思い入れ」は、消費サイクルからは自由であり、時代を超えた力を持つはずだ。それが「DRMの死」によって簡単に無に帰してしまうとしたら、ちょっと悲しい。


 PS. その後、ネットイベントのチャットにおいて、小寺氏と津田氏に「プラットフォームの移行とDRMの寿命」について感想をたずねることができた。両氏の回答はコチラ。  
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