April 22, 2014

沢木耕太郎「流星ひとつ」を読んだ

 さすがに出版直後は趣味が悪いかなという思いもあって手を出せずにいた本。

4103275162流星ひとつ
沢木 耕太郎
新潮社 2013/10/11

「何もなかった、あたしの頂上には何もなかった」――1979年秋。歌を捨てる決意をした美しき歌姫・藤圭子に、沢木耕太郎がインタヴューを試みた。その肉声は、聞き手と語り手の「会話」だけで紡がれる、まったく新しいノンフィクションに結実した。だが――。一度は封印された作品が、33年の時を隔てていま、新たによみがえる。(書籍紹介文より)

 いざ読み始めてみると、藤圭子という人物の魅力に引き込まれ一気に読み終えてしまった。なんというか読む前に予想していた内容とは全然違っていたというか、とてもシャープでエッジの効いたリアルなインタビュー作品だった。もしかしたら著者は改めて今の時代に合った形で推敲したのかもしれないけれど、とにかく30数年前に著された作品という感じはなく、生々しくも新鮮な感じがして、今そこにまだ彼女は生きて息をしているような錯覚を覚えてしまう。

 彼女が歌手をやめる直接の原因が、自分の納得できる声で歌えなくなったからだったという話は、曲がりなりにも音楽表現に携わる者としては何か共感できるものがある。

 それにしても、最後の章に出てくる次の会話には何か凄まじいものがあったな……。
「あなたは、一度、頂に登ったよね。その頂には、いったい何があったんだろう?」
「何もなかった、あたしの頂上には何もなかった」

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