August 29, 2010

有川浩「植物図鑑」を読んだ

 これまで題名で敬遠していたのだけれど、なんとなくそういう気分だったので手にとって読んでみた。

4048739484植物図鑑
有川 浩
角川書店 2009/07/01

ある日、道ばたに落ちていた彼。「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか? 咬みません。躾のできたよい子です」「―あらやだ。けっこういい男」楽しくて美味しい道草が、やがて二人の恋になる―。書き下ろし番外編に加え、特製“道草料理レシピ”も掲載。(書籍紹介文より)


 ここ最近読んできた「キケン」「フリーター、家を買う」「シアター!」が立て続けにラブコメ濃度低かったので、今回はどうなんだろうと思っていたら、なんとも激甘なラブストリーリーでごちそうさまでした(笑)。

 絶対にリアルではありえないであろう「男を拾う」というシチュエーション展開に始まりつつ、道草の採集と料理のシーンには有川浩らしいこだわりの描写が溢れていて、その辺りが最初はかったるいのだけど、いつの間にか途中からニヤニヤして読まされてしまうのは相変わらずの上手さ。

 あとは、初出が携帯小説サイトということをあとがきで知り、なんとなく今までのノリとはちょっと雰囲気が違うなと感じていたのはそのせいなのかなと思ったり。

 それにしても、もはや恋愛なんてものにはまず縁がない年老いた自分にとってみれば、彼女の小説は、まさにインセプションの中に出てくる、深い夢に浸るための魔法のクスリみたいなものの一つ。現実は悪夢でしかなく、夢の中こそが理想を実現するための世界なんだよねぇ……。
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