August 23, 2010

タラ・ハント「ツィッターノミクス」を読んだ

 今さらだけど、2010年春先に話題だった本「ツィッターノミクス(原題:The Whuffie Factor)」を読んでみた。

4163724001ツイッターノミクス
タラ・ハント(著)
村井 章子(訳)
津田 大介(解説)
文藝春秋 2010/03/11

ポストWeb 2.0的な何か。


 読む前に予想したよりもずっと真面目な本だった。

 雨後の筍のように粗製濫造された日本のツイッター本の多くとは異なり、著者が数年かけて当事者として体験した事や、同時期にWeb上で実際に起きた事例を取り上げて考察しているので、素直に納得できる内容となっている。

 ただし、ドッグイヤーと形容されるような時の流れのITの世界においては、この本のような牧歌的な「ソーシャル」のあり方は、すでに古き良き昔話である可能性も否めない。

 その一番大きな理由は、この本には「Facebook」が台頭する以前までの話しか書かれていないからだ。良くも悪くもFacebookはその後の世界を変えてしまっている。(日本の場合はまたちょっと状況が違って、モバゲーやGREEのようなケータイプラットフォームが優勢な中、ツイッターが果たしてどういう収束の仕方をするのか今のところよく判らない…)

 で、個人的にはと言えば、ちょっとナイーブ過ぎるかもしれないけれど、ここに書かれたような理想論がこれからも末永く通用するような世界であって欲しいという思いはある。「訳者あとがき」で紹介されている献本にまつわるエピソードなんて、かなり「いい話」なので、この本にちょっと興味はあるけれどまるまる1冊を読むのは面倒くさいと言うならば、そこだけでも立ち読みすると良いかも。

 それにしても、今となっては、このあまりにも「ツイッター・バブル」なマーケティングに則って付けられた邦題が、却ってこの本の価値を実際よりも低めてしまっている気がして、それはちょっと残念な感じ。まぁ、この原題をそのまま日本語にしても意味不明だし、かなり難しかったのだろうとは思うけれど……。
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