May 01, 2007

アメリカのネットラジオをとりまく環境がとんでもないことになっているらしい

 Gizmodoの4月29日付け記事「SoundExchange Collects Internet Radio Royalties for Every Artist, Even Non-Members」(記事に使われている写真が「痛い」ということで、別の意味で読者コメントが荒れているので、気の弱い人はリンク先に飛ぶ時に注意…)を読むと、アメリカのネットラジオはいよいよもって終焉が近づいたような気がする。

 同記事によると、RIAA(全米レコード協会)傘下の楽曲使用料徴収団体SoundExchangeは、ネットラジオで使用された楽曲の著作権料徴収に関して、非常に厳格なルールを適用する方針で、楽曲提供アーティストがSoundExchangeに加盟しているかの有無を問わず、全ての楽曲が著作権料徴収の対象になるとのこと。

 もし仮に、SoundExchangeに加盟していないアーティストの楽曲が使用された場合、ネットラジオ局は依然としてSoundExchangeに対して楽曲使用料を支払わなければならないが、そのアーティストはSoundExchangeに加盟しない限り、自分の分の楽曲使用料を回収することはできない。つまり、SoundExchangeに加盟していないアーティストの楽曲使用料分に関しては、まるまるSoundExchangeの収入になる。

 もちろん、これからSoundExchangeに加盟することで、アーティストは自分のネットラジオにおける楽曲使用料を回収できるのだけど、SoundExchangeに加盟するためには、別途費用が発生する。

 ん〜、どこの国でも、著作権管理団体のやり方は、なんだか都合が良い仕組みになってるねぇ…。
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この記事へのコメント
> 差し引かれる金額が、作家の納得できるバランスであるかどうかですね。

そうですね。分配額の5%〜10%という程度ならば納得できるでしょうが、分配1回につきxxxドルみたいなものだと馬鹿馬鹿しくなっちゃうかもしれませんね。

> 日本の場合に限定すれば

この点には全く同意です。JASRACはCDや配信に限らず、放送使用などについても丼勘定をやめ、正確な使用実績に基づき分配すべきと考えます。
Posted by 相変わらずタイムリーではないです at May 19, 2007 00:31
色々と調べていただき、ありがとうございます。費用に関しては「it only deducts its actual costs of licensing, collection, enforcement, distribution and fees incurred in establishing statutory royalty rates」とありますから、あとはこの差し引かれる金額が、作家の納得できるバランスであるかどうかですね。

「権利団体による使用料の徴収=利権構造」という見方になりがちな一番の問題点は、まさに、上記のように、その分配がはたして、作家側から見て納得のできる方法になっているかどうかにあると思います。話を日本の場合に限定すれば、その分配方法がすでに現状の社会インフラからすると古くさいものであることは否めず、不透明な感じがするというところでしょうか…。
Posted by wms at May 18, 2007 06:43
なにか皆さん権利団体による使用料の徴収=利権構造、みたいな図式で論じがちのようですが、僕にはそんなに悪徳には思えません。

寧ろ、個人ではなかなか権利行使しにくいものまで、面倒見るという意味において良くできた制度であると思います。
Posted by 相変わらずタイムリーではないです at May 18, 2007 02:04
ちなみに、membership feeはありません。分配額から手数料が引かれるだけです。
http://www.soundexchange.com//faq.html#b6

メンバー登録しないメリットはないわけですから、未登録の著名アーティストは、単にSEの存在や法定使用料の制度について無知である他にも何か事情があるのかもしれません。(例えば、印税を貰う権利を第三者に譲渡してしまっているなど。)

なお、SEは米国著作権局によりwebcastingの使用料(音源分)の徴収分配に関する指定団体ですから、勝手に金を集めてかすめ取っているわけではありません。
http://www.soundexchange.com/about/documents/SX_Notice_of_Designation.pdf
http://www.soundexchange.com/artist_home.html#artist

Posted by 相変わらずタイムリーではないです at May 18, 2007 02:04
「一定期間権利主張のない債権は消滅する」というのと「権利主張のない債権は消滅する」というのは微妙に異なると思います。

米国法の詳細は知りませんが、日本では債権の消滅時効は10年(商事債権の場合は5年)ですから、2000年までの権利がなくことがとてつもなく不当・不合理とは言えないと思います。但し、SoundExchange(SE)が自らのwebsiteでしか啓蒙・告知を行っていないとすれば、怠慢の誹りを免れないでしょう。

Posted by 相変わらずタイムリーではないです at May 18, 2007 02:04
「自分のポケットに入れちゃうわけではないと考えるのが自然」と考えるその根拠はどこにあるのでしょうか? すでに「今年の12月15日までにアーティスト側がSoundExchange側に申し出ない場合、1996年から2000年3月末までの期間にかけて本来配当されるべきお金が得られない(SoundExchangeが抱え込む形になる)」(http://blog.livedoor.jp/storemaster/archives/50732499.html)という状況のようですけれど…。

どちらにしても、現状では「非加盟会社からの要求に応じて分配する」ということはなくて、分配が欲しければ加盟することが必須のようです。
Posted by wms at May 16, 2007 06:39
米国著作権法では、一定の要件を満たすwebcastingにおけるレコード使用は強制許諾(compulsory license)で、その対価はCopyright Royalty Boardが定める(いわゆる法定使用料/statutory rate)ことになっているという理解です。

使用料が高いか安いかは置いとくとして(まだ一悶着ありそうです)、全てのレコードについて一括して徴収するのは、日本における放送二次使用料や私的録音補償金などと同じではないでしょうか。

つまり、レコード協会が一括して徴収するが、非加盟会社からの要求に応じて分配する(または、いずれ分配するよう一定額をプールしておく)ということですね。

とすると、SoundExchangeもいったん全てのレコードについて使用料を徴収/収受するだけで、自分のポケットに入れちゃうわけではないと考えるのが自然ですね。(本当のところどうなのでしょう?)
Posted by タイムリーなコメントではありませんが at May 16, 2007 03:32
heatwaveさん、TB&コメントありがとうございます。

危惧されるのは、SoundExchangeのやり方が全ての著作権ビジネスのデファクトスタンダードとなることですね。非常に嫌な感じです…。
Posted by wms at May 04, 2007 02:37
wmsさん、こんにちは。
このエントリをトラックバックさせていただきました。

なんかすごい話ですね。日本でも管理委託者の意図していない(と願いたい)ような度を越した徴収が批判されていますが、海の向こうでは管理委託してすらいない著作物から、著作権料を徴収しているのですね・・・。今こそ制限の少ないCCライセンス下にあるような配信フリーの楽曲を提供していくべきだと思っていたのですが、このような状況では本当になす術なしなのかもしれません・・・。

というか、さすがにこれって他人の著作権の不当行使のような気もするのですが・・・。SoundExchangeに加盟していないというだけで、本来であれば著作権者が手にするべき利益が横取りされいるのですよね・・・。
Posted by heatwave at May 02, 2007 18:22
Storemasterさん、情報ありがとうございます。去年書かれたブログ記事は、当時読ませていただいた記憶があります。

気になるのは、加盟することによって得られる印税と、加盟に要する費用のバランスですね。どちらにしても、胴元が損することはない仕組みなのでしょうが…。

こういう事例を見ていると、結局「知財」ビジネスは合法的な893稼業なのかもしれないなぁと思ったりして(笑)。
Posted by wms at May 02, 2007 01:26
 連投すみません....
「その後多少加盟の動きがあったような話」についてはこちらに書いていますので、参考までに;
・Help Us Find These Musicians And Get Them Paid
http://bigozine2.com/features06/FWfindthem.html
Posted by Storemaster at May 01, 2007 21:07
 SoundExchangeについてはかなりの"ご都合主義"が前々から言われていて、手前味噌になりますが、去年の秋に私のBlogでも取り上げたことがあります。
http://blog.livedoor.jp/storemaster/archives/50732499.html
去年秋の段階で、かなりの大物アーティストがSoundExchangeに加盟しておらず、その後多少加盟の動きがあったような話は聞いていますが....こういう本格的な動きのためだったとはねぇ....
Posted by Storemaster at May 01, 2007 21:01