January 19, 2006

果たして音楽ビジネスでケータイとPCの融合はあり得るのか?

 遂にというか、ようやくというか、着うたベースのビジネスモデルがPCへ対応することになるらしい。

 ITmediaの1月19日付け記事「『iPod+iTunesに対抗できるサービスだ』──auのLISMO」によれば、KDDIは4月からPC環境にも対応した音楽配信サービス「DUOMUSIC STORE」を開始するとある。

 同サービスの肝は、クレジットカードを持っていなくても、携帯電話の通話料と合算で支払える決済方法を提供することにあるようだ。

 さらに、着うたフルをベースにしたカタログ展開が可能なことから、PCプラットフォーム上でも邦楽音源の新譜をいち早くリリースできる環境を実現でき、現時点で主力邦楽レーベルがほとんど参加していないiTMSよりも、有利と言えなくもない。まぁ、カタログに関しては、個人の趣味が大きく反映されるので、J-POPの新譜があればOKとは一概に言えないけれど、国内マスマーケットという考え方でいけば、メジャーな邦楽最新曲がほとんどないiTMS日本版は、最初から終わっているという考え方もあるな…。

 さて、DUOMUSIC STOREで気になる点は価格設定だ。

楽曲の価格も、「これから協議する。値付けは着うたフルと同様、レコードメーカーが決定権を持つ」とした。着うたフルでは300円前後と、高めの値付けが目立つが、こうしたマーケティングデータも踏まえて考えていくという。

 レコードメーカー的には、「携帯電話の着うたフルが300円で売れているのだから、PCでも同じで大丈夫」と強気にくることも考えられるけれど、すでにあのMora等でさえiTMSに合わせて200円にしてきた経緯を考えれば、さすがに300円は無いような気がする。ただ、そうすると携帯電話向けの料金システムが破綻をきたすから、なかなか難しいところだろう。

 あとは、PC版でやるということは、バックアップをどうするかという問題にも直面するはずで、どういった対応策を打ち出してくるのかが気になるところ。これに加えて、遂にHDD搭載端末も発売されることから、今回のKDDIの発表は、ソフト・ハードの両面において、バックアップという概念をケータイの世界へ持ち込むのかどうかが問われる画期的な事件なのかもしれない。

 ま、赤ん坊の耳にヘッドホンさせちゃうようなCMを堂々とオンエアしていた会社なだけに、バックアップとか、そこまで深刻なことは何も考えてないというのが一番可能性高そうだな…。

 あ、ちなみに、DUOMUSIC STOREでiPodにネイティブ対応したら、これ、日本国内では最強の音楽配信サービスになるかも(笑)。


 PS. 「Waste of Pops 80s-90s」さんが1月19日付けで、この件に言及し、やはり価格は下げてくると推測されてますね。しかし、「DRMはガチガチで間違いなし」で、「これまで同様住み分け完了して 共存じゃねえの?」という結論に至らざるを得ない、今の日本の著作権ビジネスの不毛さは何なんだろう…。

 PPS. ITmediaの記事「“iTunes追撃”のライブラリソフト『au Music Port』を試す」を読む限りでは、既にiPod+iTuensな組み合わせを使ってしまっているユーザー(Windows版を含む)には用のない代物という感が強い。“iTunesキラー”というのは、あくまでもこれまでiTunesを実際に使ったことがないマジョリティへ向けての「殺し文句」なんだろうし、そういう層にはすごく説得力があると思う。あと、ケータイ大好き人間であろうとも、PC環境がマカーなマイノリティにはもう最初から全然関係なし(笑)。
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この記事へのコメント
十六夜さんの言わんとされていることは十分に理解できているつもりですが、しかし、「携帯電話も補償金の対象とするように主張してもらい、世論の反発を買って制度自体を無くして欲しい」という方法論は、反対するためにその反対意見を持ち出すというディベートのための手法であり、今の一般的な社会常識からするとわかりにくすぎると思います。下手すると、逆に私的録音・録画保証金制度の対象枠が大きくなるだけという可能性があることも否めません。

議論のための議論は面白いのですが、そういうことが理解できない人達にも真意を伝えるための努力や工夫が今の時代は問われているような気がします。

もっとも、いつもシニカルなことを書いている自分には、そういう提案をする権利はなさそうですが(笑)。
Posted by wms at January 22, 2006 11:24
汎用HDDと携帯電話、どちらに補償金を掛ける方が容易いかと言えば、汎用HDDでしょう。インパクトが違いすぎます。

MNPが秋から始まる上、ドコモ、ボーだフォンに対抗する目玉が音楽である以上、auは補償金形式に対しては、抵抗すると読んでいます。
(携帯全機種1000円の補償金という事に対しては、ドコモ、ボーダフォンが黙ってないだろうし、auの携帯だけとなれば、それだけ競争力が落ちるわけだし)

KDDIは一つの組織であり、グループとして携帯電話製造メーカー(≒汎用HDD製造メーカー)をまとめやすい立場上、虎の尾と表現しています。
また、著作権料を稼いでいるサービス(着うた)を持っている相手に喧嘩を仕掛けないだろうとも見ています。

だからこそ、審議会の委員には、携帯電話も補償金の対象とするように主張してもらい、世論の反発を買って制度自体を無くして欲しいのです。
Posted by 十六夜 at January 21, 2006 19:57
なるほど、そういう意味でしたか。わかりました。

ただ、汎用HDDに対しても私的録音保証金を求めようとしている人達ですから、KDDIが「虎の尾」とはとても言えないような気はします。というよりも、これまで曖昧だった音楽機能付き携帯電話端末が、これでようやく私的録音保証金の対象になったと考えているのかもしれません(笑)。
Posted by wms at January 20, 2006 06:10
あ・・・(滝汗)

携帯電話に対して、私的録音補償金を掛けようとする行為から、如何にこのシステムが矛盾だらけか世間一般に広められるかと思ったのですが甘かったみたいですね。

世間一般の人にとっては、『iPodに補償金を掛けろ』と言われても、『ああ、そう。』ですましてしまうでしょう。
しかし、『携帯電話で音楽が聴けるから、その分の補償金を支払え。実際に聞くか聞かないは関係ない。』と言われたら、『なんだって〜!?』となると思うのです。

権利者団体の主張が如何に妄言を繰り返しているのか、一般の人に理解して頂く良い見本になるか・・・と

KDDIという虎の尾を踏むことはしないだろうから、実際には権利者団体は主張しないだろうとあたしは踏んでいますが。
Posted by 十六夜 at January 20, 2006 00:29
コメントありがとうございます。確かにこのシステムは、CDのリッピング機能を提供して携帯電話端末と連携しようということも含めて、著作権法的に一線を越えることになりそうですね。

ただ、ここで、携帯電話端末も含めて私的録音保証金制度を盛り上げる運動をしようというのは、ちょっとベクトルの向きが違うような気がします。私の場合、私的保証金制度はあくまでも全廃が望ましいと考えています。
Posted by wms at January 20, 2006 00:02
元のニュースソースを探す時間がないので記憶からですが、
『パソコンでダウンロードした音楽ファイルを別の機器にコピーして聞く際には、私的録音補償金を支払う必要がある』と、権利者団体は明言していたはずです。
当然、携帯電話に対しても適用されるはずです。
これで、私的録音補償金が携帯電話に対しても掛けられることとなりました。

文化庁の審議会でも、ipod等を私的録音補償金の対象機器に含めることを主張するように、携帯電話を対象機器に含めることを主張するよう、権利者団体代表へ圧力を掛けることにしましょう。
Posted by 十六夜 at January 19, 2006 23:24