March 31, 2023

ピンク・フロイド 『狂気』Dolby Atmos版体験会に行ってきた

 御茶ノ水 RITTOR BASEで開催されていたピンク・フロイド 『狂気』Dolby Atmos版体験会に行ってきた。

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 Apple Musicを使って家の環境で体験できるDolby Atmosオーディオというのは単に音がやたらに左右に広がって派手だけど音楽の焦点がどこにあるのか判らない子供だましのギミックという印象が強くて好きになれず、正直この体験会にもあまり期待はしていなかった。

 ところがRITTOR BASEのオーディオシステムで実際に音が鳴ってみるとその音のすごさに圧倒され、すいませんでした自分が間違ってました、単に自分の家のシステムがチープなだけでDolby Atmosオーディオに非はありませんでしたと謝るしかなかった。音への埋没感と超低音による空気の振動は、まさにピンク・フロイドのメンバーがリアルに演奏しているかのような迫力を再現していた。

 とくに5曲目冒頭の「The Great Gig in the Sky」のピアノは、もう完全に目の前に本物のピアノがあってリチャード・ライト本人が弾いているとしか思えないようなリアルさで鳴っていて感動してしまった。いかにオリジナルの録音やミックスが素晴らしく、また新たにDolby Atmosのために施されたオーサリングが元の音の良さを上手に引き出しているのがよく判る瞬間だった。

 ただ、家に帰ってきてから冷静に考えると、このDolby Atmosという仕組みはやはりあれだけデカい音で鳴らせないとロックのような音楽では意味が無いんだろうなという考えに至ってしまった。そもそもが映画館等での立体音響システム向けに開発されたシステムな訳で、派手なスペクタクルシーンでの環境音を劇場観覧者へ効果的に聴かせるためにあるような代物だ。なので、うちの家のように爆音で再生できない条件だとその良さが全然活かせない。Dolby Atmosのすごさを体験するだけなら、音響システムの良い劇場でド派手なハリウッド製娯楽作品を観るのが一番だろう。

 昔、5.1chサラウンドが市場に登場したばかりの頃、オノセイゲン氏がやたらに5.1chの素晴らしさを喧伝していて、まさに音のプールの中にどっぷり浸かるような感じで気持ち良いんだよという形容をされていたのだけれど、あの当時は一体何を言っているのかさっぱり理解できなかった。今回RITTOR BASEでのDolby Atmos版体験会を経てようやくあのセイゲンさんの発言の意味をしみじみと噛みしめることができたのだけど、ちょっと時間がかかりすぎた。あの頃の自分は今よりも音を全然聞けてなかったのもあるのかな…。

 正直なところ、マルチ録音で構築されているイマドキのポップミュージックをDolby Atmosオーディオで聴くのはあまり面白くないんじゃないかと思う。派手なギミックばかりで耳が疲れるしすぐに飽きそうな気がする。

 一番Dolby Atmosオーディオが生きそうなのはクラシックやジャズなどの生楽器主体のダビング無しのスタジオ録音された音源に著名なホールやスタジオなどのIR音響データを自由に追加してDolby Atmos環境で再生するというやり方のような気がする。とても生々しい演奏の再現ができそうだし、小編成の弦楽みたいな音源なら一般家庭の環境でもそれなりにリアルな音量で楽しむことが可能と思う。


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