January 25, 2021

どうでもいい話:Covid-19と世界系

 いわゆる「世界系」という概念がある。正確には「セカイ系」と表記するのが一般的なようだ。

セカイ系 - Wikipedia

セカイ系(セカイけい、世界系)とは、アニメ・漫画・ゲーム・ライトノベルなど、日本のサブカルチャー諸分野における物語の類型の一つである。
定義が明確に為されないまま、主にインターネットを通じて広がったため、意味するところは諸説あるが社会学、現代文学論、サブカルチャー論などで様々に言及されている。

 世界系でもセカイ系でもどちらでもいいけれど、こうした概念で括られるエンターテインメント作品の多くは、一つの劇的カタルシスとして数多の構築物が凄まじい規模で崩壊する情景を精緻に描くことで視聴覚的な快感を観る者に提供することで成立している節がある。そして、そういう状況の中に追いやられた人々の個々の心理描写があることで、観る者はその作品への共感を高め、泣いたり笑ったり怒ったりという感情を沸き立てることで非日常的な経験を仮想的に体験することになる。世界系的作品の救いは、物語がどんなに悲劇的で破壊的な終焉を迎えようと、その作品が終われば観る者はそうした壊滅的な非日常的セカイから離れて普段の日常の世界へ戻ることができるところだ。

 Covid-19は世界の危機(少なくとも人類という種にとってはかなりの危機)という点でセカイ系的な作品で描かれる状況と似てなくもないと思う。現時点では決定的な対処方法がほぼ見つかっておらず目にも見えないウィルスという存在自体が、なぜ人類の脅威なのか今ひとつ謎が解けない設定である「新世紀エヴァンゲリオン」中の敵役である謎の生命体「使徒」そのものだ。

 残念なことに、Covid-19というウィルスは、人が病に倒れて死に絶えていっても、エヴァの中の使徒のように物理的に巨大な建物などを一気に破壊するようなカタルシスはもたらさない。あくまでも静かに事は進んで行く。

 Covid-19を発症させるウィルスの変異がどこまで進むのか判らないけれど、今のところこのウィルスは全ての動植物に害を与えるわけではないようなので、人類がたとえ滅亡しても地球上全ての生物がいなくなる可能性は低いのだろう。ヒトがいなくなったあともこの地球上には鳥達のさえずりが聞こえるのであれば、核の力によって全ての生物が死滅してしまう「渚にて」ほどには悪い終焉ではないのかもしれない。巨大で破壊的な崩壊のカタルシスが無いセカイ系はちょっと退屈かもしれないがそういう作品もそのうち登場するのだろうし、スペリオール連載の「フールナイト」はそうした匂いがあると感じる。  

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