August 01, 2018

映画「万引き家族」を観た(読む人によってはネタバレになっている可能性あり)

 映画の日だったのでようやく気になっていた「万引き家族」を観ることができた。正直な話、映画の日の割引価格が適正な劇場鑑賞価格なんじゃないかと思うし、正規の値段は自分のような貧乏人にはちょっと贅沢すぎる。いつか正規の値段でも悪くないじゃないと言えるぐらいにリッチになりたいものだ(笑)。もしくは普段の生活では万引きで暮らして劇場代を貯めるのが良いのかもしれない。

family

 さて、映画料金の話はさておき、この映画、想像していたような物語とは全然違ってかなりビックリした。よくこんなチープなテレビ番組でありがちな「火曜サスペンス劇場」的プロットを、こんなにも丁寧な映画に落とし込んだものだと感心した。おそらくテレビ用にするなら、もっと説明的な台詞やシーンをどんどん挿入して、余韻なんて何もない安っぽい話になったろうし、もっと簡単に泣ける感じにできたはずだとは思う。

 幸か不幸か、グッとくるシーンは随所にあるけれど、簡単に泣けるほどにはチープな演出はされていないし、テレビの制作予算とスケジュールではおそらく実現不可能なほどに念入りな撮影と丁寧なカット選びが施されていてそういう意味では圧倒されるものがあり、カンヌ映画祭で最高賞を獲得するだけのことはあったと改めて感じいるものがあった。

 ただ、それだけにとても「映画」的であり、普段の過剰な説明と判りやすい演出に慣れたテレビ大好きな人達が観ると不完全燃焼かつ意味不明の作品になっているような気もした。カンヌでパルム・ドール獲ったからという話題だけで観に来た人の少なくない割合は何がなんだか判らなくてつまらないと思いながら劇場をあとにした可能性は大いにありそう。

 映画評などをほとんど見ないままで観ることができたので本当にビックリするようなストーリー展開だったけれど、唯一残念だったのは安藤サクラの警察での尋問シーンがすごいという話だけは前もって知っていたので、逆に過剰な芝居を予想していたせいで次がすごいのかなと身構えてしまったがゆえに、素直にリアルタイムで感動することができなかったのはとても悔しかったりした。映画館を出た後に、あのシーンを反芻して、あぁやはりあれはすごかったなとちょっとうるっときたりもしたのだけけれど、なんだか同時にとても損した気持ちにもなった。映画のネタバレというのは、おそらく個人差があって、同じような前情報を知っていたとしても、それで気になるところと気にならないところは人によって全然違ったりするのだろうなということを改めて感じた。

 映画終わりの最後のカットはちょっと意外というか、あれで終わることには映画会社的になにか揉めたりしたのだろうか。たぶん米アカデミー賞を狙うのであればあの終わり方は不適切だと思うし、逆にカンヌ映画祭向けなんだろうとも思ったり。

 ともかく後半になってからのどんでん返ししていく展開の「え、そうなの?」というビックリ度は「スティング」並みにちょっとインパクトがあった。観る前に想像していたよりもどんよりと救いようのないヘビーさは無かったけれど、それでも明るい映画ではないし、込み入って判りにくい人間関係に基づいたプロットなので万人にはお勧めできないし、安易に勧めたりすると文句言われる可能性が高い映画だなというのが結論。もちろん個人的には映画代の価値が十分にあったので観て良かったとも思っているけれど。

 ちなみに個人的に一番泣けたのは、亜紀(松岡茉優)の客が嗚咽するシーンだった。あれはかなりやばかった。  

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