February 11, 2023

伊澤理江『黒い海』を読んだ

 ツイッターに流れて来た書籍紹介記事を見てなんとなく気になったので読むことに。


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黒い海
講談社

著者:伊澤理江 1979年生まれ。英国ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。英国の新聞社、PR会社などを経て、フリージャーナリストに。調査報道グループ「フロントラインプレス」所属。(製品紹介文より)


 読了後「これはすごい本だ…」という独り言が思わず口から出た。

 著者は英国の大学院でジャーナリズムの修士課程を修了し、その後現地の新聞社やPR会社での仕事を経験しているということで、国家のような強大な権力に追従することなく、さらに感情的ではなく客観的に事実を探求するようなジャーナリズムの仕事をする力というのはやはり日本の中だけでは培われないのかなと思ってしまった。とくに文中で他の記者達などの言動に触れる箇所があり、著者がそういうものを意識したかどうかは判らないけれど、改めて日本のジャーナリズムにはちょっとした諦観を覚えてしまった。

 たまたま自分はジャーナリズム概論という授業を英国人教授の下で受ける経験があって、そこで強く戒められたことの一つに、ジャーナリズムというのはどうしてもセンセーショナリズムに陥りがちであるが、そういう行為はもっともやってはいけないことだということだった。しかし、いまどきの一般的な日本のジャーナリズムは「センセーショナリズムありき」で成立していると感じることが多い。そして、この『黒い海』という本にはセンセーショナリズムとは対極にある姿勢を感じた。

 もし自分がこの本の著者だったら最もセンセーショナルで最も疑わしいと考えられる事故の原因を冒頭から声高に主張することだろう。この本の著者はそんな稚拙なことはせず冷静に筆を進めていく。それだけに最後に導き出される話は重く説得力がある。

 残念ながらこの事件にまつわる原因の真実はいまだ確定していない。けれど、国際政治がいよいよ焦臭いものになりつつある今という時代においては、こうした不条理な事態が起きる可能性はさらに増えていくことを避けられないのかもしれない。そうした状況の中で、何事につけ頑なに情報開示しないことに長けたシステムを強化していく日本という国に生きることの怖さみたいなものを改めて考えてしまった。もちろん日本だけがそういうわけでもないだけに、どこにも逃げようがないという怖さもあるのだけど。  

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January 05, 2023

エレキギターの弦高調整に専用ゲージを導入してみた

 フェンダー系エレキギター、とくにストラトタイプのブリッジの弦高調整は、各弦ごとにサドルのイモネジをちまちまと締めたり緩めたりするのだけど、サドルごとにネジが2本あるのでちょっと面倒くさい。それに指板のアールに合わせるのを目視だけに頼っていると、なかなかピタリと決まらない。

 何か良い方法はないかと調べてみたら、プロは専用のゲージを使うらしい。これで楽ができるのなら試してみるかということで、思い切ってちょっと良いものを手に入れた。

IMG_0555

 使い方は英語だけど以下のYouTube動画を見てなんとなく理解した(笑)。



 要は、指板のアールと同じゲージを弦の上にのせて各弦を弾いて軽くビビるように合わせていけばOKということになる。作業はそれなりに辛抱強くやるしかないけれど、それでも目視だけに頼っていたときに比べると能率は良いし正確だ。

 調整が済んだギターはこれまでよりもずっと弾きやすい。安い買い物ではなかったけれど十分に価値があったなと感じる。


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MUSIC NOMAD (ミュージックノマド) ステンレス製 指板 サドル R測定 ゲージ MN603 【国内正規品】

Music Nomadの高精度指板サドルR測定ゲージには、さまざまな機能と利点があります。正確な測定値(7.25インチ、9.5インチ、10インチ、12インチ、14インチ、15インチ、16インチ、20インチ)と分かりやすい説明書がオンラインでダウンロード可能なので、安心して作業を行えます。(製品紹介文より)

  
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October 17, 2022

ブリッジのアールと指板のアールが合っていないとギターは弾きにくい

 いわゆるレスポールタイプのギターを手に入れて色々いじっているとどうも弾きにくい。何が悪いのか、弦高をあれこれいじってみてもしっくりこない。

 困り果ててブリッジ周りを色々な角度から見ていたら、ブリッジのサドル自体は指板のアールに合わせた高さになっているのだけど、弦そのものの高さが指板のアールと合っていないことに気付いた。とくにネックの両サイドに位置する1弦と6弦が微妙に他の弦よりも高い状態になっている。

 原因は、各サドルの弦溝がちゃんと弦の太さに合わせて切られていないから。とくに6弦は5弦よりもずいぶん高い位置になっているし、1弦もほぼ2弦と同じぐらいの高さになっている。

 細いヤスリで6弦と1弦のサドルの弦溝をほんの少しずつ削っては高さを確認する作業を繰り返し、それぞれの弦の位置が指板のアールにほぼ合うように調整してみた。結果は以下の写真のような感じ。

lp_bridge

 これだけの調整でかなり弾きやすくなった。ギターという楽器はこういう微妙な部分をあれこれいじってやるだけで全く弾き心地が変わるのが面白いというか面倒くさい。フェンダータイプのギターならヤスリがけのような面倒なことをしなくても、サドルにあるネジを調整するだけで済む仕様だけれど、あれはあれでネジの微妙な締め具合の違いでガラッと弦高が変わってしまうのでなかなか厄介だったりする。

 値段の高いギターはこのあたりの調整が出荷前にちゃんと職人の手によって行われているから高くなる訳なんだけど、初心者向けの低価格モデルは一切そうした調整がされていないので弾きにくかったりする。で、弾きにくいと面白くないのでいつの間にか弾くこと自体をやめてしまうという悪循環。だからといって最初からこのあたりがしっかり調整されたギターを手にするのは値段の上でちょっと手が出せないのが悩ましいところ。

 低価格モデルのギターやベースは手に入れた後に自分で調整できないようであれば、一度リペアショップでプロの人に調整を依頼するのが良いと思う。それだけでかなり弾き心地が変わるはずなので。  
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July 18, 2022

続・歪み系エフェクターペダルという沼:Nobels ODR-1

 自分でも病気だなと思うけれど、楽器店で今まで試したことがない歪み系ペダルを見つけるとどうしても試してみたくなる。

 先日、米ナッシュビルのセッションギタリスト界隈で人気がある「Nobels ODR-1」が店頭にあったのを見つけ、思わず誘惑に負けて試奏することに。

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 人気があるのも納得というか、歪み具合を調整する「Drive」ツマミと、トーンにあたる「Spectrum」ツマミをいじった変化のあり方が判りやすく、ちょっとしたクランチからガツンとしたオーバードライブまで、耳が痛くない状態を保ったままで美味しい音を作りやすいと感じる。

 筐体の色が緑色なので、いわゆるTS系なのかと勘違いしてしまうけれど、TSのような中音域ばかりが強調されるタイプではなく、高音から低音までまんべんなく鳴ってくれるので、シングルコイルやハムバッカーといったピックアップの特性をあまり気にせず使えるのも良い。

 開発された経緯は、フェンダーのBassmanアンプの音をコンパクトエフェクターで再現することを目指したそうで、なるほどという感じ。オリジナル回路を設計したのはドイツ人のKai Tachibanaという人で、今は独立してより性能を発展させたモデルを個人で製作販売している。英文だけどインタビューがあるので興味のある人は読んでみると良いかも。苗字からすると日本と縁がある人なのだろうか?

Interview: Kai Tachibana (Nobels, Nordland Electronics)

 製品としては、新たにベースカット回路を備えたオリジナルモデルに加えて、電池内蔵部分を省略したコンパクトモデルや、他社製の派生モデル等、色々と出ているので各人の用途や好みに合わせて一つ持っておくと色々使えそうな気がする。



 もう歪み系ペダルは十分試したつもりだったのでこれ以上買わないつもりだったけれど、1時間ぐらい悩んだ末、結局手に入れることに。まだまだ沼から這い出せなくて困ったものだ…。


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Nobels ODR-1 BC オーバードライブ【国内正規輸入品】

ODR-1は、ジェリー・ドナヒュー、ガスリー・トラップ、カール・ヴァーヘイエン、ジョン・シャンクス、ティム・ピアース、ロビー・マッキントッシュ、クレム・クレムソン、ミッキー・ムーディなど、数十年に渡って多くのアーティストに愛用されてきた秘密兵器です。(製品紹介文より)

  
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July 14, 2022

映画「エルヴィス」を観た

 まとまった空き時間が出来たので久々に劇場で映画でも観ようかと思い、いくつかの候補の上映時間を調べたらちょうどこの作品が一番都合が良かったという、あまり積極的ではない理由で観ることに。

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 エルヴィス・プレスリーのヒット曲はなんとなく知っているし、彼の生涯に関するエピソードもおおよそは知っているつもりだったので、とくに新しい発見があるかもという期待も無く、イマドキのポップでキャッチーな娯楽映画ぐらいのつもりでいたので、実際にこの映画を劇場で観てみたらその面白さと格好良さに思わず引き込まれてしまった。

 1950年代におけるエルヴィス・プレスリーというスターの登場は、おそらくは70年代後半から自分がリアルタイムで体験したきたパンクやレゲエ、ヒップホップ、テクノ等の登場という事件よりも、当時の社会に与えた衝撃はずっと大きく、また深刻であったろうということが理解できたのは予期せぬ収穫だった。

 アメリカという保守的な国において人種問題も含めた社会的規範や価値観を破壊するような恐れのある若い歌手が出現したことはまさに大事件だったろうし、もしかしたらプレスリーがいなければ、その後の音楽シーンのあり方は世界規模で全然違ったものになっていた可能性も考えられる。ビートルズもストーンズも生まれず、その後のパンクやレゲエやヒップホップも無かったのかもしれない。

 もちろん映画はあくまでも実話に基づいたおとぎ話だと思うけれど、B.B. キングやリトル・リチャードと仲良しのプレスリーという解釈は夢があるし、有名な除隊後のクリスマスショーの背景にはああいう事情があったことを知ることができたのはとても良かった。




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エルヴィス・サン・セッションズ(期間生産限定盤)
本作はRCAからメジャー・デビューする前のサン・レコード時代の貴重な録音を収録した作品。まさにデビュー当時の若きエルヴィスを知る上で欠かすことのできない楽曲が収録されている。(製品紹介文より)

  
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July 02, 2022

イアン・S・ポート「フェンダー VS ギブソン 音楽の未来を変えた挑戦者たち」を読んだ

 原本「The Birth of Loud」が出たときに読みたいと思ったけれど、当時は大判のハードカバーしか出ていなかったのでちょっと面倒だなと躊躇しているうちに、ある日気付いてみたらもう日本語訳が出ていたのでこれはズルして日本語でそのうち読もうと思っていたら随分時間が経っていた。


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フェンダーVSギブソン 音楽の未来を変えた挑戦者たち
DU BOOKS

ライバル企業の闘いが、音楽の未来を創った! エレキ・ギターの開発と普及、企業の発展史を、ロック黄金期とともに綴った傑作ノンフィクション。(製品紹介文より)


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The Birth of Loud: Leo Fender, Les Paul, and the Guitar-Pioneering Rivalry That Shaped Rock 'n' Roll


 丁寧な取材や参考文献の参照に基づいた文章で、よくあるこの手の音楽畑の適当なノンフィクション本とはかなり雰囲気が違うなと感じつつ読み進んでみたら、最後の謝辞で元々は大学院時代の研究企画から発展した著作であることが判り、なるほどと合点がいった。

 要するによくあるロックバンドの嘘か本当か判らない都市伝説の類をまとめた伝記本とはまったく異なる、まさにリアルなエレキギター、そしてエレキベースの歴史を紐解く傑作本。なので、趣味であれ仕事であれエレキギターやエレキベースを弾く者であれば、誰もが目を通すのが相応しい作品だと思う。

 エレキギターのレス・ポールとストラトキャスターは、どちらも最初に発売された時点では数年で人気が陰り市場から消え去る運命にあった(実際レス・ポールは製造が打ち切られた)のに、その後、クラプトンやヘンドリクスのような優れたアーティスト達がほとんど偶然ともいえるような状況で使う機会を得て成功した結果、今やどちらのモデルもエレキギターの歴史において他に比べようもない名器と評価されるに至ったのが面白い。運命というのはどう転ぶか判らないものだ。

 個人的にはウッドストックでのヘンドリクスが演奏したアメリカ国歌「The Star-Spangled Banner(星条旗)」が当時の米国の人々に与えた真の意味が本書を読んでようやく理解できたのがちょっとした感動だった。単に楽器演奏的にすごかったというのではなく、あの時代にあの曲をああいう形で表現したという意味の重さが、恥ずかしながら日本人の自分には判っていなかった。

 本書から「42章 エレクトリック・ギターがあらゆるものを表現できた」をまるまる引用できれば、なぜ自分がそれほど感動したかを簡単に伝えられるかもしれないが、それはさすがに著作権的にも無理なので、もっとも判りやすいと思われる一節を以下に引用しておく。

「これより前に」と、目撃者のローズ・ペインも口にした。「誰かが<星条旗>を演奏していたら、私たちはブーイングをしていたでしょうね。あのあとは、この曲は自分たちの歌になったの」
「おそらくは1960年代で最高の瞬間といえるだろう」と、音楽評論家のアル・アロノウィッツは言う。「この曲の内容が、ようやくわかったのだから。自分の国を愛していいし、政府を憎んでいいと」

 また本書の中では、いかにヘンドリクスが国歌の歌詞に合わせてギターを変幻自在に演奏したかがフレーズごとに解説されていて、米国の国歌をリアルに知る米国人以外には、とくに英語さえもほとんど判っていないような自分にはあの演奏の意味がまったく理解できていなかったことがよく判ったし、そういう背景を知らず単にド派手な演奏だからサイコーと安易に盛り上がっていた自分を恥じた。これまでは割と気軽に「なんちゃってスタースパングルドバナーです」みたいな感じで人前でもヘンドリクス風演奏を真似て遊んだりすることもあったけれど、ちょっとそれはもう出来ないのかなと…。

 それにしても、エレキギターやエレキベースの歴史の中で製造開始以来一度も不人気の誹りを受けて忘れ去られるような憂き目に遭わなかったのはプレシジョンベースぐらい(もしかしたらジャズベースも?)なのが興味深いというか、それだけエレキベースという楽器はエレキギターよりも音楽のあり方を根本的に変えてしまった発明だったようだし、その後はシンセとターンテーブルとサンプラーとDAWあたりの登場まで待つことになるのかな?

 本書の主人公であるレオ・フェンダーとレス・ポールの二人は、いずれもそのキャリアのかなり初期ですでに五体満足とは言えないような身体的障害を持つ不幸にあったにもかかわらず、その境遇に屈することなく晩年まで自分達のやりたいことを全うしたのが素晴らしく自分も見習いたいものだと感じた。もっとも、自分の人生はどこを切り取っても何の成功も収めておらず、一体何を全うすべきなのかという大きな問題が残るのだけれど……。
  
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June 20, 2022

ストラトタイプのトレモロブリッジをフローティングにしてみた

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 自分はこれまでストラトタイプのトレモロブリッジはボディにベタ付けで使うのを基本にしてきた。さらにストラト特有のバネが音に影響するのを嫌って実験的に「なんちゃってハードテイル化」までしたりもしている。

 ただ、ストラトタイプのトレモロブリッジを載せたギターは2本持っていて、1本をハードテイル化してしまったので、それならもう1本はせっかくなのでトレモロの性能を目一杯使えるようにするのも悪くないと思い、これまでのベタ付け設定をやめて本来のフローティング設定で使えるように調整してみることにした。

 ネット上にはYouTube動画も含めてトレモロブリッジ調整の極意みたいな情報は数え切れないほどあふれている。中にはなんだか根拠不明の複雑怪奇な調整方法もあって、それも試してみたりもしたけれど上手くいかない。アームを動かすとチューニングが狂って元の状態に戻らず安定しない。

 巷にあるトレモロブリッジ調整で多く紹介されているのは、ブリッジのフローティングしている高さを計って特定の何ミリにするみたいなのが多いけれど、これもなんだかしっくりこない。

 そこで一度トレモロブリッジをギター本体から外し、じっくりとブリッジを眺めて気がついたのは、ブリッジのエッジ部分の平面なところがそれなりに面積が大きい。もしかしてフローティングしているときにこのエッジの平面部分がギターの平面部分としっかり接していれば、かなりチューニングが安定するのではないだろうか。

 さらに、ボディに接しているブリッジのエッジ平面部分がアーミングで前後に動く際には、エッジの部分が角張っているよりは多少丸くなっている方が滑らかに動くだろうと考え、サンドペーパーで角の部分を少しだけ削って丸みをもたせてみた。

 加工が終わったブリッジをボディに付け直し、ボディ裏側のスプリング(自分の場合は3本を真っ直ぐに装着)を調整し、ブリッジのエッジの平面部分がボディ面と真っ直ぐ接するようにして、これでチューニングを合わせてみた。何度かアーミングをして、改めてチューニングの具合やブリッジのボディ面への接し方具合を裏のスプリングで調整する。これを何度か繰り返して、アーミングしてもチューニングがあまり狂わない状態を見つけるようにした。

 結果として、フローティングの高さを数値何ミリの基準で合わせるよりも、ブリッジのエッジ面をボディにピタッと合わせる方がアーミングした後のチューニングは安定しているように感じる。

 図で示すと以下のような感じで、上から一番目の状態がベタ付け、二番目が中途半端なフローティングの状態、三番目が丁度ブリッジのエッジ面がボディに接してアーミングしてもチューニングがあまり狂わない状態。

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 これで自分は上手くいったけれど、人によっては違うセッティングの方が良いという人もいるだろう。ストラトタイプのトレモロブリッジのフローティング調整には誰もが納得する正解は無さそうだけれど、ブリッジのエッジ面をボディ面に合わせるというのはかなり理に適ったやり方なんじゃないかと感じる。

 まぁ、トレモロバーあるいはビブラートアーム、海外だと一般に「whammy bar」という代物は、物理的にかなり無理がある仕組みで、あれをグニャリと動かせばチューニングが狂うのは当たり前で仕方ないことだろうけれど、それでも大きく狂うかほんのちょっとだけ狂うかというところで色々と人それぞれの工夫や技があるのだろう。

 それでも、もしアーミングしたいけれどどうしてもチューニングが狂うのは嫌だというのであれば、今はテクノロジーのおかげで電子的にほとんど違和感ないほどにビグスビーのビブラートアームの動作を再現したエフェクターが開発されたので、それを使えばギター側のチューニングが狂うことはなさそう。ただし、それなりに高い出費となるけれど…。




【追記】ストラトタイプのブリッジが載っているギターのフローティング設定はかなり色々と試してみたけれど、結局2本は疑似ハードテイル化、1本はベタ付け設定に戻してしまった。弾いているうちにチューニングが微妙になってくるのが自分のプレイスタイルには合ってないという結論。コードを鳴らしたときにアームでやるビブラートの響きは大好きなんだけど……。


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BIGSBY Pedal ポリフォニック・ピッチシフター・ペダル
Gamechanger Audio

BIGSBY Pedalは、弦のベンディングとビブラート効果を再現する画期的なポリフォニック・ピッチシフター・ペダルです。従来のトレモロシステムとBIGSBYトレモロアームを搭載しています。(製品紹介文より)

  
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June 06, 2022

歪み系エフェクターペダルという沼

 エレキギター弾きで歪み系エフェクターペダル沼にはまっていない人はかなり少ないのではと思う。

 冷静かつ客観的に考えてみると歪み系のエフェクトペダルなんて1つ、まぁもう少し大目に見ても2つもあれば十分なはずなのに、なぜか同じようなものをいくつも手に入れてみては何かが違うという思いに囚われはじめて、またいつの間にか新しいペダルに手を出すという愚行を繰り返してしまう。

 この業というか病気みたいな傾向は、エレキギター弾きですごく顕著で、あとはDAW界隈のサチュレーション系のプラグイン好きな人達がやはり同じかもしれないけれど、それもやっぱりエレキギター弾きからそっちの道に行った人に生じやすいのではないかと想像したり。

 エレキギター弾き以外の人からすると何が違うのかさっぱり判らないであろう本当に些細な歪み方の変わりように気も狂わんばかりのこだわりをもつのがこの病気の怖いところで、実際YouTubeの試奏動画なんかを見ても、たとえば自分の場合はハードロック/ヘビーメタル向けのディストーションは興味がないので、そちら方面に特化したペダルの音質比較だとさっぱり違いが判らなかったりする。でも、軽いクランチやオーバードライブ用ペダルだと気のせいぐらいに微妙な差がすごく気になってしまうという…。

 で、歪み系ペダルにはいくつかのスタンダードがあるのだけど、その1つがいわゆる「Tube Screamer(チューブスクリーマー、略してTS)」系。これを好きなギタリストは非常に多い。でも、自分はTS系がどうも苦手というかどちらかという嫌いだったりするし、そういう話をするとかなり多くのエレキギター弾きを敵に回すことになる(笑)。



 個人的には「Blues Breaker(ブルースブレイカー)」系が好きだけど、こちらはなぜかTS系に比べるとそれほどポピュラーじゃない。理由はTS系に比べると音質変化が少なくてわざわざエフェクトをガツンをかけている感じがしないからなのかも。



 いずれにしても、TS系もブルースブレイカー系もエレキギター弾き以外からすれば、音が歪むエフェクトという以外には大差なさそうだけれど。

 どちらのペダルもコピー/クローン/復刻品/現行品とかであれば色々と出回っていて安い物なら数千円程度で入手可能だけれど、最初に発売されたオリジナルで状態の良いものを手に入れようとすると数万円は出費する覚悟がいる。ネット検索すると、安いコピー品とオリジナルを並べて比較する動画がたくさんあって、そういうのを観るとほとんど音質差なんて無いに等しい結果が判る。それでも高い金を積んでオリジナルを買う人は後を絶たない。個人的にはそこまでするのは全く理解できないけれど、まぁ趣味の品というのはそういうもの。まさに沼(笑)。

 で、最近の自分のお気に入りはTS系でもブルースブレイカー系でもないやつ。今も現行品が安定して流通していて、なおかつ中古もタマ数が多くて安価に入手できるのが素晴らしい。 TS系あたりがギターやアンプとの相性をかなり選ぶ印象あるのに対して、このペダルはそういうのを気にせずかなりオールマイティに使えると感じる。

OD-3 OverDrive  BOSS公式ページ

od_3


 BOSSの公式デモ動画は古すぎてセンスもちょっと自分の使い方とかけ離れすぎてるので、もう少しクランチ/オーバードライブ寄りのデモ動画をチョイス。しかし、これもエレキギター弾き以外の人が聞くとTS系やブルースブレイカー系と何が違うのとなりそう(笑)。



 ちなみに、BOSSの歪み系ペダルには他に「BD-2 Blues Driver」という人気モデルがあるのだけれど、これも自分はかなり苦手でまたまた多くのエレキギター弾きを敵に回していたりする…。


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BOSS OverDrive OD-3

これがオーバードライブの新たな定番、OD-3。デュアル・ステージ・オーバードライブ回路を搭載。美しい倍音と図太い低域、粘りのあるサステインが特徴。コード・カッティング、リフからソロまでオール・ラウンドに使えるオーバードライブ。(製品紹介文より)

  
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May 31, 2022

ギターのコントロールノブ形状は思った以上にプレイに影響がある

 先日、Fender Mustangタイプのギターを借りてバンド状況でプレイする機会があった。

 ムスタングはショートスケールだし普段自分が使うギターとは演奏の勝手が違うので戸惑う部分も色々あったけれど、一番違和感があったのはボリュームとトーンをコントロールするためのノブだった。

mustang_controll

 ムスタングをいじったことがある人なら判ると思うけれど、ノブの外周が普通の円ではなく7角形になっている。

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 この7角形の指への当たり具合が微妙で滑らかに回らずどうしても7角形に沿ってカクカクとなってしまう。そのため、プレイ中に音量調整しようとすると、意図せずして7段階のプリセットで音量を切り換えるみたいな感じになり、直感的に丁度良い音量にサッと決めるのが難しい。

 エレキギターのボリュームポットというのは、わずか数ミリ動かすだけでかなり大きく音量が変わることがあるので、7段階のプリセットみたいな感じで大雑把に動くようだと適切な位置にするのは無理がある。できれば無段階で調整できるようであってほしい。

 そんな訳で、もし自分がムスタングのような7角形のコントロールノブが付いたギターを手に入れることがあれば、あのノブは速攻で交換することになるだろう。たかがノブの違いだけで、まさかあれほど使いずらいことになるとは思いもしなかった。  
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March 09, 2022

実験:ハムバッキングピックアップのマグネットを交換してみた

 うちにあるエピフォンのES-335モドキの「Dot」には「Gibson '57 Classic」風味の「Epiphone Alnico Classic」というハムバッキングピックアップが搭載されている。

 元々、Dotを入手したのは試奏してみて音が悪くなかったからなのだけど、弾いているうちにどうも高音成分のエッジが少しきつい鳴り方が気になってきて、できれば出力の弱いヴィンテージ風な味付けのピックアップに換装したい欲求が高まってきた。

 ただ、その手のリプレースメント用ハムバッキングピックアップは価格が高め。ネック側とブリッジ側の2つセットで入手しようとすると安くても4万円超になって財布にやさしくない。しかも最近はコロナ渦の影響で海外製ピックアップの入手が以前より難しく、たとえ入手可能でも価格がやたらに高騰化している。

 で、色々とハムバッカーについて情報収集していたら、ピックアップのマグネットを交換すると、それだけで音色の傾向を変えることができることが判った。マグネットなら割高な楽器用でも2つで2000円前後から入手できる。ピックアップ交換に比べれば破格に安い。

 ということで、まずはマグネットだけを交換することにしてみた。Epiphone Alnico Classicのマグネットはアルニコ5らしいので、より磁力が弱くてヴィンテージぽい音が狙えそうなアルニコ2を入手して交換することに。入手先はサウンドハウス。

MONTREUX Rough Cast Alnico 2 Magnet for HB

 マグネットの交換方法についてはYouTubeを検索すれば丁寧な説明動画がいくらでも見つかる。自分が参考にしたのは以下の動画で、とくにピックアップカバーの外し方が他と違って半田ごての熱ではなく、刃物を使って力技でガツンと外してしまうのがミソ。



 エピフォンのハムバッキングピックアップはハウリング防止用のポッティング(ロウ漬け)が強力でドップリとロウが使われていて、このせいで半田ごての熱でカバーを止めている半田を溶かそうとすると、カバーの中でロウが溶け出してカバーを外すのがかなり困難になってしまう構造になっている。なので、乱暴だけど、半田部分をノミ状の刃物でガツンと破壊してしまう方が簡単かつ問題なくカバーを外すことができる。実はこれは改造作業中にピックアップを一つダメにして発見したことなので、もしエピフォンのピックアップを改造しようとする人は要注意。結局、自分は一つピックアップをダメにしてしまったので、Reverb.comで同じピックアップの中古品を探して個人輸入する羽目になってしまったのはあまり思い出したくない黒歴史…。

 マグネット交換後の音質変化は予想した以上で、アルニコ5の時と比べてアルニコ2の音は、高音のパキパキしたきつさがなくなると同時に低音のドカンという押し出しもなくなり、良く言えば上品な鳴り方になった。悪く言うと、明らかにパンチがなくなったのでゴリゴリのジェント的な奏法には全く向かない。クリーンからちょっとクランチさせるぐらいの音が欲しい人には最適な感じ。全体的には過剰な高音と低音がなくなった分、素直でヌケが良い音という印象。

 マグネット交換はピックアップそのものの交換に比べると破格に安い投資で劇的に音質を変えることができるので、ハムバッカー(もしくはP-90)で現状の音に不満を感じている人なら、改造の手間と失敗のリスクを恐れないならやってみる価値は大いにあると思う。  
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